押せば成る【影山飛雄】【３】

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試合は着々と進んでいき、今は8対6で白鳥沢が優勢。

そんな中、近くで応援していた烏野OBさんたちが「おい見ろあれ！」と下を指差した。



「影山がアップしてる！戻ってくるぞ！」



私もその先に視線をやれば、コートサイドでアップをこつこつやっている影山くんの姿がある。

ほんとだ、と思いながらなんとなくそれを眺めていると、私の視線に気づいたように彼は顔を上げた。



「(凄っ、なんで気づくの)」

「……………」



ぐっぐっと腕をクロスさせる運動をしながら私から目を離さない影山くん。

ふと先程のやっちゃんの言葉が蘇る。

…まあまあ遠いし届くかよくわからないけど…



「影山くんっ」

「！」


「見てるよ！」




" 見ててください "

昨日、真面目な顔して言われたことに対する返事を想定して放った言葉。

試合中だし、すぐに次のプレーは始まるから長いことなんて言えなかった。

けれどそれを聞いた彼はきゅっと口を閉じ、まるで何かを決意したような顔をして私から目を逸らす。
そしてそのまま自分の頬をパチンと叩いていた。



「届きましたね！」

「まあ、これでやる気出るならいくらでもやるけどね…ていうか私が見てたことによく気づいたよね影山くん、もはや怖いわ」

「何言ってるんですか！七海先輩もですよ？」

「ん？」



へへへと笑うやっちゃんに首を傾げると、今度は彼女にしては珍しくニヤッとした笑顔で言う。



「最終セットが始まる前に影山くんがこっち見てた時、七海先輩もすぐ気づいてたじゃないですか！おあいこさんです！」



頭の中を思い返せば、確かにそうだ。
「なんか影山くんこっち見てる」って言ったわ私。

知らぬ間に脳内が彼で支配されていたことを知り、ついつい自分に呆れてしまう。

私だって、大概じゃないか。

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