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10. 攻撃力は上がる ページ10






「…っぶ、あっはははははは!!!!!」



俺がこうなっとる経緯を角名が簡単に話せば、途端にツムが笑い出す。



「マジで!?そんなことあっていいん!?」

「嬉しそやな侑…」



ツムに釣られて周りにも笑いが起こり始めた。

ええねんええねん、笑え笑え。

このどうしようもない惨めな俺を笑い飛ばせ。



「いやー、治くんは乙女なんやなぁ?」



……いややっぱ、こいつにだけは笑われたくない。

しばらく黙りこくっとったものの、ツムの無神経な言葉にイラッとしてやっと立ち上がる。

そして今度は俺が胸ぐらを掴み、先ほどのツムに負けへん勢いで怒鳴った。



「お前にはわからんやろな!!!かわええかわええ思て毎日見とった子をやっと試合に誘えた健気な俺の気持ち!!そして来てくれた思たらまさかの片割れのファンやったっちゅーオチ!!ほんっまなんやねん!!意味わからへんわ!!」



俺にブンブンと勢いよく振り回されるツムは「やめっ、ちょ、わかった!わかったて!!」と必死に俺の手を掴んでくる。

その間にも周りは笑うなり呆れるなりしとって、北さんに至っては「くだらん」の一言で片付けられてもうた。



「でも治、試合なんやからシャキッとしいや!私情は持ち込んだらあかん!話ならあとで聞いたる!」

「アランくん…俺の味方はアランくんだけや…」

「俺もまあまあ協力してやってんですけど」

「あ、そうや角名も…」

「?まあ治も元気になったことやし、張り切っていこか!!2セット目も取るでー!!」



すがり寄る俺を引き剥がしながら士気を高めるアランくん。さすが俺らのエースや。


その後の試合は、稲荷崎が勝った。

まあ相手はそんなに強ないとこやったし妥当っちゃ妥当やけど、2セット目以降はなんかもう全てを振り切ってムキになった俺の攻撃力が莫大に上がったのが勝利の鍵やった、なんて北さんには言われた。

喜んでええんか悲しむべきなんか、どっちやねん。


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作者名:みずかわ | 作成日時:2021年1月10日 14時

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