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「…っあ」
唐突に、くしゃくしゃ、と頭を撫でられる感覚。
大きくて温かいその手の持ち主は、私を見て苦笑いした。
「俺になら話せるか？」
優しい瞳が私を見つめる。
優しい声が私を包む。
「…うん、多分」
でも、その瞳にはどこか切なさが混ざっている気がして。
・
「前原もそんな気にしてねぇよ、考えすぎ」
口を開いて真っ先に出てきた悠馬くんのその言葉は、私に安心と勇気を与えるには充分すぎるほどだった。
私が深く考えすぎていたのだ。私が気にしすぎていただけなのだ。
「陽斗、今更行っても許してくれるかなぁ？
また、今迄みたいに一緒に帰ってくれるよね？」
「ああ！そりゃあな！」
その一言と悠馬くんの笑顔のお陰で、私は一歩、前に進める。
「まだ陽斗いた？」
「教室に居たはずだけど…」
「…！…っい、行ってくる！」
早く、早く。
このちっぽけな勇気がどこかへ行ってしまう前に。
貴方がどこかへ行ってしまう前に。
貴方への不安を、心配を、嫉妬を、好意を、――恋心を、早く。
言葉にして、声に出して。
貴方に、届けなくちゃ。
貴方をぜんぶ、丸ごと、今―――。
(ばいばい、僕の影法師)
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作者名：ここなっつ | 作者ホームページ：
作成日時：2017年1月12日 0時
