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「おはよう」
そういっても返事は返ってこない。
それが何も悪くない陽斗に冷たい対応をした私にとって当然の制裁であって、もしかしたらもう二度と話せない…
なんてことがあってもおかしくない。
いつもの「おはよう」の挨拶も今日はする気になれず、それどころか今日はいつも陽斗、悠馬くん、私の三人で歩くはずの通学路も、寂しそうに一人ぼっちの私を見送った。
「今日はいつもより早いんだね」そんな風に話しかけられている気がした。
学校についてE組の扉を開けても誰一人いなかった。
好都合だった。
朝の支度を済ませ、自分の机に座る。
椅子を引くとガタが来ているのか、大きく音が立った。
「おはようございます。今日は随分早いですねぇ」
「…殺せんせー、おはようございます」
精一杯の笑顔を浮かべて、先生に朝の挨拶を返す。
先生は二コリ、と小さい目を細めて微笑むと、今度は心配そうな顔になって私の近くに歩みを進めた。
「ところで夜空さん、今日は元気がないようですねぇ。
どうかしたんですか？」
この先生ばっかりは嘘をついても無駄だ。
そう分かっていても、ついつい虚勢を張ってしまう私はつくづく馬鹿だと思う。
「何もないですよ。
…ただ、雨の日はあまり好きじゃなくって」
「そうですねぇ、確かに外に出るのが億劫になりますよね。
先生も分かります」
この言葉をどう繋げばいいか分からず、二人の間には沈黙が訪れる。
心の奥底にしまってある気持ちを見透かされていないか。
虚勢を張っている事が悟られていないか。
昨日から続く様々な不安が入り混じった感情が脳内を目まぐるしく回っている。
「…でも、思い切って外に出て水遊びをしてみたら意外と楽しかった、なんてこともありますよ」
先生はそう言い、教室を後にした。
ぴしゃりと完全に閉じられた扉は、湿気のせいか普段より色濃く木目が浮き出ている。
「なんだ…
やっぱり、やっぱり……」
目の奥からこみ上げる液体をすんでのところで食い止める。
「…わかってるじゃんか」
(全て分かっていますよ、先生ですから)
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作者名：ここなっつ | 作者ホームページ：
作成日時：2017年1月12日 0時
