>>15. ページ16
「返事は今度でいいから」
何に対する返事？
返事をするのは、告白を受けた陽斗じゃないの？
無かったことに――って、いったい何のことを指してるの？
自分のことも陽斗の言っていることも訳が分からなくなって、止まって欲しいと一心に願っている筈の涙がボロボロと音を立て落ちる。
「っそれって、…どういうことっ？」
「そのまんまの意味だって！
…なんでお前は自分が言うだけ言って帰ろうとするかなぁ……
俺のカッコがつかねぇじゃん」
訳が分からない。
カッコがつかないのは私の方じゃないの？
精一杯の告白をしても逃げた。ほんっとに、意気地なし。
「……っ、好きだよ、A」
ぴたりと止まった私の足に、一滴、雫がしたたる。
雫が私の足をツゥッと滑り落ちていく。
「好きだ、好きなんだよAのこと。
幼馴染とかそういうんじゃなく、普通に恋愛対象として好きなんだよ！」
これは、夢？
それとも空耳？
陽斗が私のことを好きな訳がない。
告白した時のあの反応。
もしも両想いだったらきっと彼はもっと嬉しそうな顔してる。
「うそっ…」
「嘘じゃねぇって。こんな俺がいっても信じてくれねぇかもしれねぇけど、本気。
…返事は今度でいいから……」
――もしも、もしもの話だ。
本当に陽斗が、私のことを好きなら。
「私も……！」
きちんと、答えるべきなんだ。
涙でぐしょぐしょの顔でも、ぐしゃぐしゃの声でも、伝えなければならない。
ずっと心に秘めていた想い。叶うことはないと思いながらも捨てきれなかった想い。
「すき、です……っ」
言葉でも、身体でも。
溢れ出て止められない想いを。
伸ばした手を彼の大きな背中に廻せば、いつかの懐かしい、愛しい匂いが私を包んだ。
(やっと、みつけた)
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作者名：ここなっつ | 作者ホームページ：
作成日時：2017年1月12日 0時
