>>14. ページ15
「…なぁ、A」
私の名前を呼ぶその声が、私は好き。
私を見つめるその優しい瞳が、私は好き。
涙に濡れてしまう私の手をそっと掴んで優しく涙を拭ってくれるその温かい掌が、私は好き。
今も、昔も変わらない。
変わっているようで変わっていない。
ねぇ、陽斗。
私、ずっときみが―――
「好き」
私は確かに言った。
言ってしまった。この想いを。
あふれ出る想い。止まらない想い。止められない想いを。
目の前の陽斗は、唇をぐっと噛みしめ、頬を赤くして私を見つめる。
私は対照的に、一つ息をついて陽斗から目を逸らす。
言うだけ言った。返事がどんなものであっても、私は受け入れなければならない。
そうは思っても、やはり自分に自信が持てるわけでもない。
だから、どうしても―――
「ごめん、変なこと言って」
逃げてしまう。
「っ…A！
なんでっ……どこ行くんだよ！」
「ごめんね…ごめんっ……
気にしないで……」
また、明日からは『幼馴染』に戻って欲しいの。
普通に、今まで通り接してくれればそれだけでいいから。
「――っ…ズリィよ、A!!」
聞いたこともない、強い声。
あぁ、男の子なんだなぁ。そう感じる。
でも彼のその声は酷く震えていて、泣きそうで、私が困らせたんだという後悔の気持ちが心の中に溢れる。
ごめんね陽斗。
本当に、今日のことは全部なかったことにして。
何から何まで忘れて欲しい。お願いだから。
「…――っ返事は……今度でいいから、どんなに後でもいいから。
俺、ずっと待ってるから――どんな返事でもいいから、頼む…。
無かったことには、しないでくれ」
(正反対を望むふたり)
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作者名：ここなっつ | 作者ホームページ：
作成日時：2017年1月12日 0時
