>>13. ページ14
陽斗は、いつも優しい。
誰に対しても優しい。優しすぎるんだ。
だから、今もこうして逃げ出した私の手を掴んでいる。
振り返らなくても、陽斗の心配そうに私を見る表情がまざまざと思い浮かぶ。
「なぁ、なんかあったのか？俺に言ってくれよ、話聞くから」きっと彼はそう言うんだ。
「……なぁ、A」
でも、今回の私の予測は見事に外れることになる。
「…ごめんな、A……」
「っ、えっ……」
全くもって予想していなかった「ごめんな」という言葉。
思わず陽斗を振り返ると、そこにあったのは心配そうな眼差しではなくて苦しそうな顔。
どうしてあなたがそんな顔をするの？
「ごめん…ごめんな……」
「なんで…よ…」
「ごめん…ホント悪かった……」
ごめん、ごめんとうわごとの様に呟く陽斗。
どうしてあなたが謝るの？
あなたが謝る必要はないのに。
「どうして、陽斗が謝んの……っ」
「だって…俺A泣かしちまったし…その、なんつーか無責任なこと聞いちまったから……」
「………」
陽斗は、何にも分かっていない。
確かに私が泣いた理由は陽斗のあの発言でもある。でも、私の気持ちを分かっているようで何一つ分かっていない。
俯いた視界の端で、私の金髪がチラリと揺れる。金髪は夕陽に当たり、キラキラと眩しく輝いている。私は思わず目を細めた。
「……っ、ばっか、やろっ」
私の口から漏れ出た言葉に、陽斗は目を丸くする。
その表情の変化具合があまりにも面白くて、場違いだって分かっていてもついつい吹き出してしまった。
「…ちょ、なんで俺罵倒されたかと思えば笑われてんだよ……」
「だっ、だって…面白く、て…っふふっ」
「だーもー全く、失礼なヤツだなー」
彼にこの思いを伝えても、今みたいな困り顔で軽くあしらわれてしまうのだろうか。
(あと一歩、その足が出せなくて)
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作者名：ここなっつ | 作者ホームページ：
作成日時：2017年1月12日 0時
