>>10. ページ11
「ねぇっ……なんで？」
やっとのことで絞り出した声は、情けないくらいに震えていた。
必死にこらえていた筈の涙は零れ落ち、彼の結ばれた手にボタボタと滴る。
嬉しいのか悲しいのか、怒っているのか悔しいのか、色々な感情が一斉に脳内を駆け巡り、頭がじんじんと痛む。訳も分からないまま、私は涙を流し続ける。否、涙が勝手に流れ続ける。
「なんでって……俺だって分かんねぇよ」
「どうして、抱きしめたりするの。
……幼馴染だから？」
『幼馴染』。
小さい頃からずっと、私と陽斗の間でお互いにその立ち位置が定着していた。
小さい頃は抱き着いたり抱き着かれたり、互いの家に泊まったり一緒にお風呂に入ったり、子供だからこそできることなんていっぱいあった。
でも、私たちはもう中学三年生。
『大人』から見れば子供かもしれないけれど、私はもう『子供』というほど幼くはないと思っている。
じゃあ、陽斗は？
その答えが知りたかった。
今の陽斗は『どうやら傷ついたらしい幼馴染』を慰めるために、こうして
「違う」
「っじゃあ、なんでっ」
「………」
どうして、と聞いても、彼の口からは答えは返ってこない。
その理由は、陽斗が噓をついているからなのではないだろうか。
言い訳を必死になって考えているからだろうか。
本当はただの『世話の焼ける幼馴染』そう思っているからではないだろうか。
もしも、もしも陽斗がそう思っているのなら、面と向かってそう言ってほしい。
そう言ってくれたらどんなに楽だろう。
失恋する。
その事実に変わりはないのなら、真実を言ってくれた方が何百倍もマシだ。
大嫌いなら、「大嫌い」と言われても構わない。それが本心ならば。
でも、もし嘘をつこうとしているのなら―――。
「―――離して」
(素直になれないのはお互い様)
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作者名：ここなっつ | 作者ホームページ：
作成日時：2017年1月12日 0時
