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「お前は我慢もできないのか」
「自分の意見ばかり押し通そうとする子なんて育てた記憶はない。
母さんが産んだのは、他人第一に考えられる子だ」
「我儘ばかりの子供を誰が好きで育てるものか。
この家に居たかったらそれくらい直せ」
毎日のように、こんな言葉を父に言われ続けた幼少期。
傷ついては泣きじゃくり、また「意気地なし」と罵倒された毎日。
「そんな泣き虫は出ていけ。
お前はうちの子じゃない」
そんなことを言われると、幼い頃の私は決まって素直に外に出る。
怒っていても怒っていなくても、お父さんに逆らえばどうなるか分からない。
「うえぇ〜…ん」
「はは、やっぱ今日も来た」
「うん…っうぅ…ぇ…っく」
「そろそろ泣くの卒業しろよな」
そうやって冷たいことを言いつつも、まだ小さい手でわしゃわしゃと頭をなでる影。
今はゴツゴツとしている。
「ほら、もう泣くなよ。
…ほら、おかしあげるからさ」
「母ちゃんがよく仕事の人に貰ってくんだよ。
食いきれねぇから、やるよ」
そう言って私の手に一口サイズのチョコレートを一粒握らせたのは、もう何年前になるだろう。
「ありがとぅ…っ」
「ひろとくん」
泣いている私の隣。
彼はいつもそこにいた。
(思えば、そこが始まりだった)
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作者名：ここなっつ | 作者ホームページ：
作成日時：2017年1月12日 0時
