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生まれて初めて銃を握ったのは、もちろん今日、つい先ほどのことだ。
「ひ、陽斗」
恐る恐る幼馴染の元へ駆け寄り、話しかける。
人見知りの私には、勿論新しく友達を作る勇気なんてなかった。
「お、どうしたA」
「あ、A久しぶりだな」
陽斗に続いて悠馬くんも私に挨拶する。
2人の話題もやはり、私が話そうとしていたことと同じだった。
「あのタコみたいな怪物、何だったんだろうね」
私が話題を振ると、悠馬くんが答える。
「あぁ…いきなり防衛省の人に『殺してくれ』なんて言われて銃とナイフ渡されても困るよな。
俺らは暗殺者な訳じゃないんだし」
「それどころかド素人の中学生だよ」
でも、と口を挟んだのは陽斗だった。
「成功報酬100億だろ⁉
100億なんて貰えたら美人なちゃんねー達と遊び放題じゃねぇか!!」
陽斗の浮かれ具合にはまだ余り慣れない。
「美人なちゃんねー」と遊んだところで何が楽しいの？
そう聞きたいのをぐっと堪え、でも陽斗の発言に水を差す。
「でもさぁ陽斗、100億って相当な金額だよ?
そんな金額がついた首なんて全くの暗殺初心者に殺せると思う？」
私のセリフに悠馬くんも頷く。
「Aの言う通りだよ。
というか、プロでも無理かもしれない。
国家機密にしてあるくらいなんだから、相当手強い」
そっかぁ、と頷く陽斗に向けて、私は一言付け足す。
「そもそもの話、そろそろ女遊びやめなよね。
一応今年から受験生だし、彼女コロコロ変えてたっていい事無いと思うよ」
陽斗の顔は少し不満げになる。
そればっかり、とでも言いたげな目でこちらを見つめる。
目が合う。
私はなぜか、目の奥が熱くなるのを感じた。
引っ込め。引っ込め。
一度強く目をつぶる。視界が黒に包まれる。
目を開ける。
そこには、「何してんだよ、お前」と言っている陽斗の顔。
口に出さなくても、分かるんだから。
だって、幼馴染だから。
小さい頃から、物心ついた時から隣にいたから。
手に取るようにわかるの。
「今まで遊ばれてきた女の子たちが、可哀そうだよ」
――私の心は陽斗に引き付けられるのに、
その気持ちは一方通行だということも。
(貴方に貼られた「幼馴染」のレッテル)
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作者名：ここなっつ | 作者ホームページ：
作成日時：2017年1月12日 0時
