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「A！帰ろうぜ」
何年も前から変わらない関係。
私にとっては、「良くも悪くも」変わらない関係。
私が何も言わなくても、彼はいつも私の傍にいる。
私の名前を呼んで、一緒に居ようと言ってくれる。
「うん、帰ろう」
ある意味では、ありがたいことなのかもしれない。
私が自分の気持ちを内側に秘めてさえいれば、この関係は変わることがないのだから。
でも、逆にそれは苦痛なのかもしれない。
一緒にいると、精一杯押しとどめている想いがあふれ出してしまいそうになるから。
「せんせー、殺せるかな」
「な。つーか、俺が絶対殺す！」
地球の運命がかかってるもんな。
そう言って笑う陽斗に、やはり私の乙女心は揺さぶられる。
心臓がきゅうんと音を立てて縮こまるようなもどかしい感覚。
好き
その二文字が脳内を支配する。
「うん、頑張ろうね」
いつから陽斗に「好き」なんて言えなくなったのだろう。
小さい頃はそれこそしょっちゅう言っていたものだ。
トクン、トクンと心臓の音が木霊する。
リズムは次第に早くなり、それにつられてか音の大きさも増してゆく。
「頑張ろうね」ではなく「頼りにしてるね」の方が女の子っぽかった？
陽斗の好みの女の子のタイプは、私みたいなオドオドしてて友達が少ないヘタレなんかじゃないんだろうな。
そもそも今まで陽斗が付き合ってきた女の子たちは、きっと例外なく私とは正反対の、明るくてかわいい女の子たちなんだろうな。
――好きなのに、私は陽斗が付き合ってきた女の子たちのことを誰一人知らない。
悠馬くんですら知っているというのに。
考えれば考えるほどマイナス思考に陥って、また考えて、ネガティブになって…
まるで蟻地獄、もしくは不思議の国のアリスに出てくるような深い深い穴に落ちた時みたいに、きっと私の思考はどんどんマイナスに支配されてゆく。
「A、お前なんで泣いてんだ？」
そう彼に言われるまでは、頬を伝う滴の存在に私は気づかなかった。
(恋は甘くて、苦いモノ)
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作者名：ここなっつ | 作者ホームページ：
作成日時：2017年1月12日 0時
