志麻*ショートカット(菊香) ページ6
「ショートカット、やな」
「は?」
思いもよらない彼の発言に何も考えずに出てしまった声。
「は?ってなんやねん」と笑う度に目元のほくろが若干動くのが面白い。
「お前が聞いたんやろ。なんで2組の小林サン振ったんかって」
「確かに聞いたけど、質問と答えが噛み合ってなさ過ぎてびっくりした」
この男……志麻はよくモテる。
その一番の理由としてはそのルックスだと思う。
憎たらしいほどにイケメンだ。本当に憎たらしいほどに。
小さい頃私のしょうもない悪戯にピーピー泣いてたとは思えないその容貌。
保育園時代の志麻の写真でも見せてやりたいわ本当。
その無駄に整った顔をしているせいで有り得ないほど告白されている志麻は今日も今日とて隣のクラスの女子に呼び出されていた。
そして告白され、毎回のごとく振ったらしい。
「志麻も勿体ない。小林さんめちゃめちゃ美人なのに」
「整ってるとは思うけど、タイプじゃないっていうか」
「うわ最低」
口ではそう言いながら内心はほっとしてしまう。
わかっている。本当に最低なのは私の方だ。
小さい頃から続いている片思い。その思いに区切りをつけることも出来ずにずるずると引きずっている。
誰がどう見ても志麻の1番近くにいる女子は私。
幼馴染みだからと言ってしまえばそれまでだがそのポジションにどっぷりと浸かり今日もこうして志麻の隣を歩いていた。
そして彼の口から出される“振った”という話。その話を聞いて口角が緩んでしまう自分が嫌いだ。
「てか何、さっきのショートカットって」
「小林サンって髪長いやんか」
そう言われて小林さんの姿を思い浮かべる。癖のないサラサラなストレートの黒髪。
その髪は長くて胸元より下だった気がする。
「ショートカットやったらちょっとは考えたかもしれんのに」
「そんなにショートカット好きだったっけ?初耳かも」
「知らんかったん?女子はショートカットが1番ええやろ」
「ふぅん」と言葉を返して肩あたりまで伸びた髪を指で弄る。
ショートカット、ねぇ。
そこまで長いわけでもないけれど短いわけでもない微妙な長さの私の髪。
「お前も切ればええのに」
「え?」
「意外と似合いそうやけどな」
返す言葉が見つからずに火照る顔を隠しながらクルクルと指先で髪を弄った。
似合う……か。
ちょっとは考えてもいいかも、なんて思いながら思わず口元が緩んだ。
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しろもん* - すごく良い作品ばかりで、ひたすら感動していました。私は、最後のお話が好みです。でも、本当にどの作品も素晴らしかったです。 (2020年1月21日 23時) (レス) id: 36bbb34c6c (このIDを非表示/違反報告)
アヤノ(プロフ) - 涙がボロボロで止まらなかったです。描写もどのお話も素晴らしく、Bバージョンもとても楽しみです。 (2020年1月19日 0時) (レス) id: b204067585 (このIDを非表示/違反報告)
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