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「鍵、返すね」
チャリ、と金属が触れ合う音がして、座っていたわたしの膝の上に、いつか一緒に行ったテーマパークの、別にかわいいなんて1mmも思ってないけどカップルものだったから買って渡したキーホルダーと、わたしの家の鍵が置かれた。ふわり、と、煙草の匂いに混じって彼の香水が香った。少し甘くて、でも出会ったときに比べれば随分と大人っぽくなったなぁ。もう甘いだけじゃ、ないんだな、わたしを好きだった頃とは違って。
「じゃあ_」
「まふ、君」
彼の襟元を引っ張って、顔を近付ける。忘れられるかな、この一世一代の恋。ほんとは忘れたくなんてないんだけどね、神様はいつだって他人だからさ。わたしが幸せだろうがなんだろうがどうってことないんだよ。わたしが今日コンビニで買い物した時にすれ違った人とか、店員さんとかの幸せに興味ないのと同じようにね。
最後のキスを仕掛けながら、君がわたしの運命の人だったらよかったのになんて、やっぱり思ってしまう。未練タラタラで虚しいな。それでも、姑息で孤独で、わたしを勘違いさせてしまうくらい優しい君のことが大好きだったんだ。
だから、これで最後だからさ、最後くらい綺麗に終わらさせてよ。
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しろもん* - すごく良い作品ばかりで、ひたすら感動していました。私は、最後のお話が好みです。でも、本当にどの作品も素晴らしかったです。 (2020年1月21日 23時) (レス) id: 36bbb34c6c (このIDを非表示/違反報告)
アヤノ(プロフ) - 涙がボロボロで止まらなかったです。描写もどのお話も素晴らしく、Bバージョンもとても楽しみです。 (2020年1月19日 0時) (レス) id: b204067585 (このIDを非表示/違反報告)
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