◎天月＊祈願(nana) ページ31
山の中、木々を震わせるように響く和太鼓と鈴はそこが人ではないものの世界との境であると教えているような気がした。恐ろしいほど厳格に定められた拍子に足音を合わせ、ず、ず、と赤と白の袴が集団で動く。
丑三つ時にぽっかりと浮かんだ満月はしかし不気味だった。真っ暗闇の方が落ち着く、それは彼女と共にいた場所のせいだろう。
草陰に身を潜めた。さわさわと風が草を鳴らす。
見知ったはずのその音ですらも耳に障る。
大勢の男達によって、神輿が担がれている。
その人達の中にいるのは僕の父、兄。...そしてAの、父、弟。
この状況に何の疑問も抱いてなどいないとばかりに、無表情で歩を進める。
御輿の中には、Aがいる。
彼女は、今日。
神に、喰われる。
▲▽▲▽▲
僕達が住んでいる村は、とうきょうとかいう未来都市とは程遠い田舎だった。
びる、なんてものはない。一番高い建物は村の入り口にある物見櫓だ。車なんて、村に一台しかない。よっぽどのときにしか使わない。でんしゃなんてそんなもの、見たこともなかった。
特に不自由だなんて思ってなかった。
僕はこの村に生まれて。
朝、昼、夕、山と川の神様にお祈りをする。
▲▽▲▽▲
▽▲▽▲▽
いつも自然の恵みをありがとうございます
僕達は今日も神様のおかげで生きていけます
今日も神様の恵みを頂きます
神様のお作りになった命を頂きます
神様がいらっしゃる場所に住みます
どうか殺さないでください
どうか私達をお側に置いてください
代わりに、...
▲▽▲▽▲
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しろもん* - すごく良い作品ばかりで、ひたすら感動していました。私は、最後のお話が好みです。でも、本当にどの作品も素晴らしかったです。 (2020年1月21日 23時) (
レス) id: 36bbb34c6c (このIDを非表示/違反報告)
アヤノ(プロフ) - 涙がボロボロで止まらなかったです。描写もどのお話も素晴らしく、Bバージョンもとても楽しみです。 (2020年1月19日 0時) (レス) id: b204067585 (このIDを非表示/違反報告)
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