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「A、だって。A」
「坂田さんは優しいね？得体の知れない宇宙人かもしれない私を本当に攫っちゃうなんてさ」
いつかの冬の海に戻ってきた。
氷の様に私たちに体当たりしてくる風を二人くっつきながら私が一時間後にはあの世行になっていたかもしれない場所に進んでいく。二人靴、靴下を剥いて歩き出す。
寒い、とは思わなかった。だんだんとコートを着ていることが馬鹿馬鹿しくなって、海の底へと投げつける。水しぶきが上がって、離れていた二人はまたくっつきながら海の中心部へ足を進めていく。止めたくなかった。
あの後聞いたことばかりある。坂田さん、って名乗ったあの時のおニーさんはあの海が大好きな優しい青年だった。機会を作る仕事をしているらしい。だから白衣を着ながら助けた時、一瞬機械なんじゃないかと錯覚するほどに心臓が止まって、時間が止まっているように感じたらしい。何とも運命的な出会いなんでしょう。灰色だった世界がカラーに変化して、それはもう綺麗な時間が流れたのなら、私もあの時死にそうになっていてよかった？かもねと互いに今では笑い話にできるくらい印象的かつ、幸せ。
こんな私たちを見たら世間はバカップルというし、また変人コンビと称する。そんな他愛もない話を延々とずっと続けられるのが、くだらなく人生を楽しめている種になる。
そうだ、と名案を思い付いた。坂田さんにしかできないし、坂田さんにしか成功してほしくないお願いを、どうしても叶えて欲しくて、戻りに来た。
そう、私は人魚だったのだ！…ということはなくて、足が歩く毎に痛まないし、言葉も全然普通に喋れてしまったのである。異星人との恋、も燃える熱い恋を坂田さんとしてるかもしれないけど、それはお互い不便だろうなぁ。空綺麗。海水重い。今日は波が穏やかだなぁ。坂田さんに話しかけるほどでもなくて、自分で自問自答している会話はちっぽけ。君たちの祖先はこんな会話をしてたんだよ、って未来の子供に知られてしまうかもしれないし、教科書にカップルの存在定義について形式上述べられてるこれからを想像したら少し以上に今の時代はなんて窮屈なんだと思ってしまった。
息を吸う。ツンとした鼻につく海水の匂いが私は結構好きだった。
＊
一度入ったら、出られない使い捨ての水槽に入る。
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しろもん* - すごく良い作品ばかりで、ひたすら感動していました。私は、最後のお話が好みです。でも、本当にどの作品も素晴らしかったです。 (2020年1月21日 23時) (
レス) id: 36bbb34c6c (このIDを非表示/違反報告)
アヤノ(プロフ) - 涙がボロボロで止まらなかったです。描写もどのお話も素晴らしく、Bバージョンもとても楽しみです。 (2020年1月19日 0時) (レス) id: b204067585 (このIDを非表示/違反報告)
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