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翌日、部長に呼び出され、応接室で2人きり。
十中八九、昨日のことだろう…Aが休みでよかった。演技は俺の得意分野だから。
「…で、昨日の夜は何があったんだ。」
「営業部で飲み会がありました。」
「それは聴いている。私も行きたかったが…そうではない。」
「その飲み会は営業部を手伝ってる秘書部の人たちも誘おうってなって、ほとんどの人が来てました。俺は、雪城さんから飲み会に参加するということは聞いていたにもかかわらず彼女が来てなくて携帯に連絡しても音信不通状態の為、不安に思い職場に戻ったところ倉庫のドアをたたく音が聞こえました。」
俺が声のトーンを下げてそういえば、部長はこの先の発言の内容が分かったのか眉をひそめた。
それもそうだろう、俺がここから話す内容はもはや罪のレベルだ。
「そこから先は思っているとおりです。倉庫には内側から開けられないようになっていて、俺が中を確認したところ、雪城さんが閉じ込められていました。人の命がかかっていたので、申し訳ないですがドアを壊して開けて。彼女の体が冷え切っていたのでとりあえず抱きしめてたら接待明けで戻ってきた部長と遭遇、そして今に至ります。」
「…誰がそれをやったか心当たりはあるか?」
「確信は持てませんが。」
部長は深くため息をついた、そうこの件はこれで終わるしかないのだ。
そもそも証拠がない。誰がやったか、なんとなく想像はつくがそれはあくまでも予想の範囲内で証拠がない以上罰することはできない、だから犯人探しもだが彼女を守ることを考えないと。
「…そうだ部長、俺今期ずっと成績トップなんですよ。
で、来月もトップだったら……なんでも、お願い聞いてくれません?」
「どうした突然…まぁいい、言ってみろ。」
「それが………―――」
「おいおい…まぁ、お前の功績はすばらしいから…いいだろう。」
「ありがとうございます!では先方との時間が迫っているので、失礼します。」
案の定、俺の望みを伝えれば部長は驚いていたが最終的には承認を得た。
え、俺の望みはなんだったのかって?それはまだ内緒、誰にもいえない秘密。
笑みを隠しきれていないと思うが、どうにか表情を作ってその場から去った。
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