8人目 ページ8
不自然な程に静まり返った夜の街。風が凪いでいるというのに、私の心は荒れ狂っていた。
狙撃には絶好のポイントについていた。
私は彼を救えると思っていた。
しかし、ライフルスコープ越しに見えたのはライが彼に近づいた瞬間。
私は間に合わなかったのだとその時悟った。
彼を救う為にはライを撃ち抜くしかない。なのに弾丸はライを撃つと同時に、彼の身体も貫いてしまう。
私には撃てなかった。冷えていく身体と鈍る思考。
どうする事も出来ないまま、ただ見ていた。
それが一瞬だったのか数秒だったのかはわからない。少なくとも時間はほとんど経っていなかったと思う。
少し移動して再びスコープを覗く。
感じる違和感に、私は身震いした。
だって有り得ない。
何故、彼が自らに向けた拳銃の側面……おそらくシリンダー部分をライが握っている?
予想通り彼は自決しようとして、それをライが止めた?
ライが彼を止める理由なんて、何も……
今現状でその状況が有り得ているのだから、考えられるとすればライもNOCなの!?
なら自決を止めてくれている今、発砲音を出すのはまずい。
組織の人間が狙っていると知れば彼は確実に引き金を引く。
そこまで思考して、私の身体はやっと動き出した。
自分の持てる限界を出し切って私は走った。
太陽のような笑みを浮かべ、何度も私を気に掛けてくれた彼が、自分が損しそうなくらいに優しさをくれる彼が、自ら命を絶つなんてさせてはいけない。
散々助けてもらったのだから、今度は私が助ける!
今度こそ絶対に助けたい!
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作者名:89* | 作成日時:2018年9月24日 17時