2周目 願12 ページ33
仕事が漸くひと段落つき、デスクでぼーっとしていると、視界に映った鈍色の空にもうそんな季節なのかと感じる。
あの日からもう2ヶ月程経っている。
あの日が晴れていたからか、私の心が汚濁に塗れているからかはわからないが、冬空は私に喪失感と言い表せぬ安堵を
失った時の流れを知らせる様な空に、汚い私の心を溶かして隠してくれそうな空に、複雑なこの思いを抱くのだろう。
ふと頭に温もりが乗っかった。
「大丈夫か?」
その声は上司のものだとわかっていた。それでも、その温もりに彼らを思い出して泣きそうになった。
優しい彼ら。思えば私はかなり彼らに、甘やかされていた気がする。
もう2度と会えないのだ。
いや、もう2度目を貰ったじゃないか。
それでも私は来る筈のないチャンスを貰っておきながら、掴み損ねたのだ。
でもまだ、終わってない。
諦めたら、2度目の生が本当に無駄になる。今度またダメだったなら……
考えるのはよそう。
「まだ、大丈夫です。」
「そうか。」
素っ気ない返事の影で、困った様な表情をした風見さんがいる事を私は知っている。
きっと私は酷い顔をしているのだろう。零とも互いに避ける様になってしまったから、余計に彼は心配してくれているのかも知れない。
私の近くには優しい人が多すぎる。
悲しませたくない。
どんなに嫌われたとしても、1度でも優しくされたのなら、その分優しくしたい。
その人が悲しむ姿なんて見たくはない。
まだ大丈夫だ。
大丈夫。
そう私は大丈夫なんだ。
「風見さん、1ついいですか?」
「なんだ?」
「降谷さんは……どうですか?」
どうですかってなんだ。けど、大丈夫かなんて聞けない。大丈夫ではないだろうから。
私が奪ってしまったから。
「降谷さんは、」
「俺がどうしたって?」
風見さんが答えようとした瞬間、聞こえてきた声に私は凍りついた。
デスクで私の事が見えていないのかも知れない。
でなければきっと、彼は声をかけたりしない。
声が聞けて良かった。
その声がどんな言葉を紡ごうと、きっと私は……
大丈夫だ。
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作者名:89* | 作成日時:2018年9月24日 17時