2周目 願11 ページ32
「嘘、嘘だよ……そんなのって…」
私が奪ったようなものじゃないか……
予告よりも早い時間に轟く爆音は、私を絶望の淵に立たせた。
数時間前。
萩原が殉職してから今日で4年。
遂にこの日が訪れた。
仕事は休みを取っている。かなり無理を言って取った休日を無駄にする訳にはいかない。
今度こそ、私は友人を救う。
松田があの時爆弾を解体しなかったのは、出来なかったからではなく……
悪魔の囁きに耳を傾けてしまったからだ。
もう1つの爆弾の場所を教えるヒントを、爆発の3秒前にモニターに映す。
悪趣味にも程がある。
ヒントを待てば彼は爆発に巻き込まれ、待たなければ他の一般市民の多くが被害を負う。警察を試す様な卑劣な行為に、どんな理由があれ許すわけにはいかない。
許してはいけない。
これは完全な私怨だ。
警察として褒められた思いではない。
それでも私は……
これから大きな騒ぎが起こるだろう観覧車に背を向けて、私は愛車で病院に向かった。
先にまわりすぎるのは危険だけれど、当日の朝病院に患者を装って行くくらいなら、気付かれる事はない筈だ。
爆弾は案外簡単に見つかった。
配線もそう難しいタイプじゃない。私でも解体出来る。
それに、このタイプだけはずっと記憶に刻みこんでいる。間違える筈がなかった。
最後の1本。
これを切って、松田に連絡が取れればいける。
最後の1本を切り、道具を片して病院を出ようとしたその時、
『速報です。爆弾が仕掛けられているという、拝戸ショッピングモールの観覧車、72番ゴンドラで先程爆発が起こりました。』
冷や汗が止まらなかった。
まさか…
まさか……
私が、爆弾を解体したから…
それに気がついた犯人が、もう1つを爆破したのか?
そんなの、そんなの…
私が、松田の……命を奪った。
なんだ。何がいけるんだ。なんだこの体たらくは。
人より有利な位置にいて、結局これか…
私は、一体何の為に…
行動を起こさなければ、何も変えられない?
行動したら、確かに変わったよ。
悪い方向にしか、変わらない。
それならもういっそ……
113人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:89* | 作成日時:2018年9月24日 17時