何も救えなかった私の話【名探偵コナン】 (ページ21)

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暗闇の中でⅠ ページ21

私は１度目の生を失った時、暗闇の中にいた。
今思い出してみれば、私は宮野明美に会ってない。零がよく話していた先生の事は知っていたけれど、娘さんがいたとは知らなかった。
私は組織に潜入していながら、何も知らなかったのだ……

零の泣き顔をみた。
身を挺して守ったつもりでいた。
でも、零の笑顔はみれなかった。
当たり前か……
目の前で友人が逝って笑っていられる人の方が少ない。
私の選択は間違っていたのか？

暗闇の中で私は自分の愚かさを呪った。同時に願ってしまった。

私は何も救えず、命を落とした。
私はあまりに無力だった。

もう一度やり直せたなら、今度は救えるだろうか？
それともまた繰り返すのだろうか？

起こり得ないことは酷く曖昧だが、甘美な響きを孕んでいた様に思う。

もしかしたら、神様がチャンスをくれるかも知れない。
もう一度やり直せたなら、今度は私が……

神様がいるのなら、いや悪魔でも良い。私にもう一度生をくれるなら、何だって良い。
私に彼らを救う機会を与えて欲しい。
身勝手な願いだというのは百も承知だ。
都合良くそんなことが叶うなんて馬鹿げている。

でも私は願わずにはいられなかった。

彼らが救いたい。

烏滸がましい事は解っていた筈だった。
そんな事許されてしまってはいけなかったのだ。

闇に薄く光がもれる。
温かい物で包まれている感覚と、優しい女性の声。

「Aちゃん。」

ただ私の名を呼ぶ声には、懐かしい色が灯っていた。
包み込んで守ってくれる様な……

随分前に会ったきり電話すらかけていなかったが、忘れる筈もない。
私の母の声だった。

何の前触れもなく、２度目が始まった。

これが神の力だなんて、錯覚していたのはいつまでだったか？

悪魔が存在しているのなら、私は所詮ソイツの玩具にすぎなかった。
それに気付くのはだいぶ後の事だ。

そう、100年以上後の事だった。