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3人目 ページ3

「萩原が爆発に巻き込まれた?」

それを知ったのは事件から3週間と少し、11月が終わりを告げる頃だった。

理不尽な怒りで全身が凝り固まって、無意識に歯軋りをして…
手には皺の寄った紙を持って、酷い形相で警察庁内をズカズカと歩いた。

荒々しい音を立てて扉を開く。それと同時に慣れ親しんだ顔を見つけると私は我慢ならなくて、思いを吐き出した。

「零ッ!どうしてその日に教えてくれなかったの!?萩原が、萩原が……」

「落ち着け白木、今は勤務中だ。それに、大きな案件を抱えてたお前に言ったら失敗しかねなかった。そう判断したまでだ。わかったら持ち場につけ。」

「零はッ……」

辛くない筈ない。けど、個人の感情を露わにして務まるほど簡単な役職じゃない。彼の肩には日本という重圧が常に付き纏っている。
私なんかよりずっと苦しい筈だ。

「取り乱してすいません。この資料確認お願いします。失礼致しました。」

今度は音を立てないようにそっと扉を閉ざす。
今までの勢いはなく、トボトボと下を向いて私のいるべき場所に戻る。情けない。
私が背負っているものなんて、彼に比べたらずっとずっと軽いのに…
私はゼロにはなりきれなかった。

警視庁公安部が私の所属だ。

私だって日本を背負っている。けど、人を動かす力も自分自身の力もない。私は弱い。

そりゃあ一般人と比べないで欲しいけど、自慢できるのなんて我慢強さだけで…

今回はできなかったけど…

所属している組織の事を売るつもりはない。どんなに極限状態で、目の前で友人の命が奪われそうでも私は口を開かないだろう。

けど、知らない所で居なくなってしまうのは…

「嫌、だな…」

「何が嫌なんだ?」

不意に聞こえた声は、同じ職場の友人。

「諸伏……貴方も知ってたんでしょ?萩原の事。」

「ああ、伝えるべきか迷ったんだが…」

「いいの。零にぶちまけたら、怒られちゃった。迷惑だったろうな…」

大きな溜息を吐きながらも書類整理を進める。

先日あった案件の後始末だ。
萩原の事を知るのが遅くなってしまった元凶。

「悪い。」

「謝らないで。零も諸伏も伊達も松田は特に、皆悲しいのは同じなのに……私が悪い。」

皆つらい筈なのに、子供みたいに感情をぶちまけた私が恥ずかしい。

「思い詰める事ないんだぞ。」

そう言って慰めるように頭を軽く撫でる諸伏にいつもなら怒るけど、なんだか泣きそうになった。

思えばこれが悪夢の始まりだった。

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作者名:89* | 作成日時:2018年9月24日 17時

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