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未だ冬の寒さが抜けきらない2月上旬の事だった。

伊達が車に轢かれたと知らされた。
あのタフな彼が交通事故なんて…

でもその知らせを聞いて私は、なんだかすっと受け入れてしまっていた。
こうなる予感はあった。

この事を零に知らせるべきだろうか?

いや、それが原因で支障をきたしたら今度こそ私は独りになってしまう。

彼と交わした約束を信じていない訳ではない。
1番大丈夫そうな奴が逝ってしまったからか、保険が欲しかった。

どうして知らせてくれなかったのかと詰め寄っておいて、私が彼に知らせないなんて…

とんだ卑怯者だな、私は…

「あの…」

おずおずとした声が私に届いた。
下げていた顔を声の方向へ向けると、そこにいたのは見知らぬ男性。

いや、彼は…

「はじめまして、高木渉です。あの、白木さんですよね…」

高木渉。その名前には聞き覚えがあった。伊達がワタルブラザーズなんて触れ回ってるって噂を聞いた事がある。

そういえば伊達とは警察学校以来会えていなかった。

もっと話しておけばよかったなんて、今更すぎる。

「はい。」

そう答えると彼は胸元から黒い手帳を取り出した。

「これ、伊達さんから最期に預かったんですけど、伊達さんに貴女の事を聞いて僕より貴女が持っていた方が、いいんじゃないかって…」

そうか、彼が伊達の最期を看取ったのか…
薄っすらと隈が浮かんでいる。

「それは受け取れない。貴方が最期に受け取ったのだから、貴方が持っていなさい。」

「いいんですか?」

「勿論。……伊達は最期いや、やっぱりいいわ。」

最期はどうだったかなんて聞くもんじゃない。お互いに辛いだけだ。

「僕はこの手帳が真っ黒になるまで使い込んで、伊達さんみたいな刑事になります。」

彼の静かな決意。

「頑張って。」

私には眩しかった。

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作者名:89* | 作成日時:2018年9月24日 17時

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