16人目 ページ16
「酷い顔だな……大丈夫、なわけないよな…」
仮眠室に入った瞬間聞こえてきたその声は、私が今1番会いたくて、1番会いたくなかった人。
降谷零の声だった。
「零も酷い顔してるよ。」
彼の顔色は悪い。目の下にはうっすらとではあるが、隈が浮かんでいる。
いつもは鮮やかな金髪が心なしかくすんで見えるのは、私の目にフィルターでもかかってしまったからか…
きっと私の心の問題なんだろうな…
「あれから仕事に没頭してるらしいな。気持ちは、わからなくないが、無理するな。」
優しい色を灯して彼は私に言った。きっと彼にだって思う所はあるだろうに、気を遣わせてしまっているのがなんだか申し訳ない。
「それは零も同じでしょう?それに……休むとどうしても松田の事思い出しちゃって…」
睡眠を取ると多くの人は夢を見るだろう。私の場合ここ最近見る夢は全て悪夢だ。
正確には諸伏の事があってからか…
中でもあの爆発があった日の夜は酷かった。
爆発の瞬間、引き金が引かれる音…
萩原も松田も諸伏も消えてしまう夢。
私は目の前で一歩も動けないまま、彼らが命を散らすのをただ見ている。
やめてくれと叫びたいのに声は出ない。
ふと場面が切り替わり、私の前で伊達と零が笑っている。しかし、それは一瞬で赤に染まる。
2人は崩れ落ち、その瞬間目が覚める。
冷や汗が止まらなかった。
凄く長い時間その場所にいた気がするのに、実際は20分くらいしか経過していないのだ。
流石に気が滅入る。
でも、これ以上心配をかける訳にもいかないか…
大人しく無理にでも寝るとしよう。
「悪い、俺はそろそろ戻るよ。しっかり休んでくれ。」
肯定の返事を返して零を見送る。チラリと見えた表情はどこか歪んでいた。
悲しみや後悔が見えた気がした。
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作者名:89* | 作成日時:2018年9月24日 17時