15人目 ページ15
「…、……。」
誰かが何かを言っている。その事実だけはわかるのに、その言葉は私の耳をすり抜ける。
友人が殉職しようがお構い無しに、やらなければいけない仕事は溜まっていく。
あの事件から1週間近くが経とうとするのに、未だあのショックは私の中で燻っていた。
それを忘れる為に書類仕事を延々とやり続けて今日で5日目…
6日目だっけ？
何かを察してくれたのか、書類仕事をジャンジャンやりますと宣言したからか、ここ数日私のデスクから紙が無くなった事は無い。
流石に今日の朝1番に来た同僚に……大丈夫か？と引き気味に言われた。
心理状態は良くないが、大丈夫だと答えて仕事を続ける。
先程からチラチラと視線を感じるが、鬱陶しいからやめていただきたい。
何か顔についてるだろうか？
目と鼻と口など、当たり前のもの以外ついてるとすれば隈か。
不意に声が届いた。
「白木！」
「はいっ！」
反射的に返事をする。どうやら呼んだのは上司の風見さんらしい。
「お前、最後に寝たのいつだ？」
何故そんな事を聞くのかは……心当たりあるな…
そんなに酷い顔をしているだろうか？
「4、5日前くらいだと思います。」
ここで嘘をついても仕方ない。
「家には…」
「もちろん帰ってませんけど…」
「休憩は…」
「とってますよ。1日20分くらい。」
「食事は…」
「1日1食詰め込んでます。」
段々と低くなっていく声。プルプルと拳が震えているのは私の所為なのか？
「帰れ、今すぐに…！」
「まだ朝ですよ！そんな訳にはいきません。」
確かに判断力は少し鈍っているが、まだ大丈夫だ。
仕事にミスはない。
「せめて寝てくれ。俺が降谷さんに怒られる。」
何故そこで零が出てくるのかはわからないが、上司にここまで言われてしまっては仮眠室に行く他ないだろう。
「わかりました。仮眠室に行ってきます。」
「ああ、好きなだけ寝てこい。」
それでは仮眠にならないじゃないか。大体、そんなに寝れる訳もない。
きっと30分寝れれば良い方だろう。
どうせ悪夢に飛び起きるのだから…
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作者名：89* | 作成日時：2018年9月24日 17時
