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松田に言われた通り動く。何故か頭が真っ白になっていて、考える事が出来なかった。


そうでなければあんな事にはならなかったのに…



轟く爆発音。

視界が眩む。
今私がちゃんと立てているのかすらわからない。
世界がぐるぐると回って吐き気がする。


松田が乗っていたゴンドラは酷い有様だった。

この様子では助からなかっただろう。
認めたくない事実を、淡々と情報として処理し始めている自分が嫌だ。

あの時、無理にでも乗り込んでいたら結果は変わっただろうか?


しばらくぼーっと立ち尽くしていると、目の前に佐藤さんがいた。その手では私の携帯が震えていた。
何も言わずに差し出された携帯を手に取る。

表示された安室の文字に、通話ボタンを押す。
安室というのは零の偽名だ。
正直出たくはなかったが、伝えなければいけない事がある。

「…もしもし、零……」

私はおずおずと彼の名を呼んだ。

『今どこにいる?』

少し焦ったような彼にしては珍しい声音で、私に問いかけてきた。

「杯戸ショッピングモールの屋上。」

その問いかけに淡々と答える。知り合いに取り繕って接する事ができるほどの余裕はなかった。
たとえ苦しい真実を語らなければいけなくなったとしても…

寧ろ早いうちに知るべきだろう。

『そこは、爆発があった所だろ!?怪我は?』

「私は、大丈夫……でも…」


松田が殉職した。


告げたと共に溢れ出た涙は私の頬を伝い、こぼれて地面を濡らした。

『うそ、だろ……』

ああ、零が1番心を許していた諸伏が命を落としたばかりだというのに、付き合いの長い松田まで…

神様とやらは酷い。


何かの所為にする私はそれ以上に酷い。

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作者名:89* | 作成日時:2018年9月24日 17時

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