何も救えなかった私の話【名探偵コナン】 (ページ11)

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11月7日……とても忌々しい日。

萩原の命を奪っただけでなく、再び罪を犯そうとしている何処の誰かもわからない人間に、同時に何も出来なかった私に、苛立ちが募る。

もし、松田の読み通りFAXが届いたら誰よりも早く現場に向かう。
向かわなければいけない。

そうするしか私の心に巣くった不安は消えないのだから…
身のまわりから徐々に去っていく友人達の姿が浮かぶ。

この日また私は失ってしまう様な気がした。

静寂に包まれた地下駐車場。
そこに停めておいた愛車に乗り込みエンジンをかける。
同時に私の懐で携帯が震えた。相手は十中八九松田だろう。

いつもより引き締まった低い声が聞こえる。

「おい、見たか？」

それだけの言葉でも、何が言いたいのか直ぐにわかった。助手席に放られた紙を一瞥する。

「見たよ。本当に来たね。」

そう、本当に予告がFAXで送られて来たのだ。その内容は簡単な暗号だった。
私の見解を松田に伝える。

「恐らく杯戸ショッピングモールの観覧車、72番ゴンドラの中に爆弾が仕掛けられてる。」

「俺も同じ考えだ。今向かってる。」

その答えに、指先が段々と冷えていくのを感じた。
まさか、出遅れるなんて…

「私は今から全速力で向かう。」

それだけ返して通話を切り、車を急発進させる。

法定速度ギリギリで一般道を走る。本来警察である私がやってはしめしがつかない危険な運転。
今日ばかりは大目に見て欲しい。