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その日の夜
私は縁側で座り、月を眺めていた
いつまで経っても忘れられない
忘れなければ、思い出す回数を減らさなければ
前に…進めない気がする……
そんな風に考え、落ち込んでいた時だった
左から急に声をかけられた
沖「どうしたんでぃ」
左を向くと私服姿の隊長がいた
髪が濡れていて、肩にタオルが乗っているので、お風呂上がりだろう
名「隊長…
なんでもないですよ
それより早く乾かさないと風邪引きますよ」
沖「なんでぃ、母ちゃん
うるせーやい
……団子屋の時から…様子変だぜ」
名「…気づいてたんですか」
沖「そりゃそうだろぃ
いきなり黙りこくったと思えば、暗ぇ顔しやがって
団子がまずくならぁ」
名「それはどうもすみませんでしたぁ〜」
沖「…どうした?」
私の横に座りながら、念を押すようにもう一度、聞いてくる
これはもう話すしかない
名「……先生のこと…思い出したって言ったじゃないですか?
なんか、ここに来てからずっとそうだなと思って、前に……進めてないんじゃないかな?って…
ここにくるまで、先生を守れず、亡くした悲しみで、ずっと先生のことばっかり考えて……
あ、いや、ここに来てからも…最初の頃はずっと先生のことを思い出しては泣いてたんです…でも…
真選組に拾われてからは少しずつ、前向いて歩けてるような…そんな感覚だったんですけど
やっぱり、定期的に思い出しちゃうっていうか…
そのせいで前に進めていないような気がして…
忘れなきゃ、思い出さないようにしなきゃ…って……そうは思うんですけど、どうしても……」
……"できなくて"…
そんな言葉を私は飲み込んだ
できない…と言ってしまえば、いよいよ前を向く方法がわからなくなると感じたからだ
沖「…別に…無理に思い出さないようにしなくてもいいだろぃ」
名「え?」
沖「忘れる必要もねー
そんなことしなくても、テメェはもう前向けてる
ですよねぃ、土方さん」
名「え?!」
私は驚いて右を向く
隊長と同じように私服で髪が濡れて、タオルを肩にかけた土方さんがいた
名「なんで?いつからそこにいたんですか」
土「さっきだよ
テメェらが話してる声がうるさくて寝れねーんだよ」
名「濡れたまま寝る気ですか?
ちゃんと乾かさんと風邪引きますって」
土「後で乾かす…
そんなことよりもだ…
俺も…総悟の意見に賛成だ…」
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作者名:さくらゆう | 作成日時:2021年2月26日 23時