: ページ38
.
まだ早い時間なのにワイワイしていて、お店の中は少し煙たい。小さなオレンジ色の照明が雰囲気を出している。案内された席は二人用の小さなテーブルで椅子はただの四角い木箱のようだ。メニューは心なしかベタついていて、はいどうぞと直接渡されたおしぼりは湯気が出ていて熱い。
「すごい…すごいねセフン！」
「こんなとこですみません」
「素敵な所だよ！」
「……何を飲みますか？」
「セフンはいつも何飲んでるの？」
「…ビールが多いです」
「じゃあそれ２つ！」
「俺は飲めません」
「え、なんで？」
「仕事中ですので」
「…いい！もう仕事終わり！」
「いや、そういうわけには…帰りもありますし」
未だに背筋をピンと伸ばし、真顔でそういうセフン。確かにここへは私のわがままできたし私についている間は仕事になっちゃうからその通りだ。でも１人で居酒屋でお酒を飲みたいから来たんじゃない。
「一緒に食べて飲みたいから来たのに」
「……」
「私のお願いきけない？お願い聞くのも仕事でしょ？」
「お嬢様」
「お嬢様って呼ばないで…」
私、一生誰かと一緒にこういうとこで食事できないのかな？今の今まで我慢してたけど、ついに寂しさダムが崩壊した。
「わたしだって友達とご飯食べたい…」
「……」
「今だけ友達になってよ…それもダメなの…？」
「……わかりました」
「え…やったぁ」
「じゃあビール２つでいい？」
「……えっ、あ、…うん」
セフンは伸ばしていた背筋を丸めて、長い足を組んでテーブルに肩肘をついた。友達になってとお願いしたものの切り替えが早すぎてわたしがついていけない。
「なに食べる？何が好きだっけ…」
「な、え、何が…あるの…かな」
店内の騒がしさに見事に掻き消されるくらいのボリュームしか出ない。ここにどんな食べ物が置いてあるかなんて分からないから、手元のベタついたメニューを見る。でも初めて見る品物はよくわからなかった。
「モロキュー？」
「それAは好きじゃないと思う」
「はぇっ」
「無難にサラダと…ここ餃子美味しいから頼むね」
「う、うん…」
慣れたように店員を呼び、スラスラと注文をしていくセフン。初めて見る姿、初めて聞かれるタメ口、初めて呼ばれた名前は呼び捨て。今目の前にいるのは私の世話係兼ボディーガードではなく、ただの成人男性。形だけの友達。しかも男友達は初めてだ。居酒屋ってすごいなぁ。まだお酒飲んでないのに顔も体もぶぁっと熱くなった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1401人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こむ(プロフ) - ひなさん» 遅くなってスミマセン！コメントありがとうございますー！わーん( ；∀；)嬉しさ爆発です！！続編できるの、時間がかかるかもしれないですが…(*´ω｀*)やる気出ました！ありがとうございます！ (2018年1月21日 14時) (
レス) id: 8ae68e1cd2 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 執事セフンたまんないです！きゅんきゅんがとまりません( ；__；)また続編よみたいです、、！ (2018年1月14日 2時) (レス) id: c290ea6bde (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - ジュンミさん» はじめまして！めっちゃ嬉しいお言葉ありがとうございます！！そんな風に思っていただけるなんて感無量です！いつかお答えできるように進展させようと思います、脳内で！ (2017年12月17日 23時) (レス) id: 8ae68e1cd2 (このIDを非表示/違反報告)
ジュンミ(プロフ) - はじめまして！すごく好きなお話です！！セフン との話長編で読みたいです！！！！！ (2017年12月11日 0時) (レス) id: 02379d08bf (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - シオンさん» ありがとうございます！そのお言葉をいただけることがもうスーパー嬉しいです！！ (2017年12月10日 1時) (レス) id: 8ae68e1cd2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こむ
| 作成日時：2017年11月21日 0時
