: ページ36
.
『そうやってすぐ突き飛ばすー』
『ほんっとにすみません…』
『相撲部屋のぶつかり稽古じゃねーんだぞ』
『すみません！』
先輩相手にそんなことをしてしまっても、変わらず毎日私に構ってくれるし優しい言葉も甘い言葉も掛けてくれるし、ベッキョン先輩のことを忘れる暇を与えられなかった。
『Aってかわいいよね。全部が』
先輩にとって私はからかいの対象でしかないって態度で分かってたけど、一瞬だけ好きだなって思ったり、ベッキョン先輩と付き合ったら楽しいだろうなぁって思ったりもしたけど、それはある種の夢だって思ってすぐに冷静を取り戻した。
「先輩」
「ん？」
「セフンと、仲直りしました」
そういうと先輩は、そっぽ向いて『ふぅん』と言った。
「よかったじゃん」
「は、はい……ありがとうございました」
「なにが？」
「色々相談に乗ってくれて」
「別に、お礼言われるほどのことでもない」
そっぽ向いたままぶっきらぼうな言い方をした先輩は、少しの間を置いてこちらに向き直る。
「なんだよーだったらキスしときゃよかったわー」
そんな冗談を言って明るく笑う先輩に、私は笑えなくて顔を真っ赤にさせてしまった。もしかしたらしてしまってたかもしれない状況に心当たりがありすぎて。
「……今しとく？」
「しっしません！」
その日、暇なまま営業を終えて、帰る準備を進めていたらセフンから『ついたよ』と連絡がきて準備のスピードを早めた。乱暴にロッカーを閉めて更衣室からでると同じタイミングでベッキョン先輩も更衣室から出てきてぶつかりそうになった。
「おー、何で急いでんの？あ、彼氏か」
「そうです！迎えに来てくれた！」
「よかったな。気を付けて帰れよーひよこー」
「はい！じゃあまた！お疲れ様でした！」
走ってお店を出て迎えに来てくれる場所に行くと、座り込んでいたセフンが私に気づいて立ち上がった。ぐんっと上の方に行く顔。下から見上げるのも慣れっこだけど、いつの間にこんなに距離ができたんだろう。昔はあんまり変わらなかったのに。
「え、なに？」
「ううん、背高いね」
「超今更だね」
「思っただけ。帰ろ帰ろ、セフンちでいいよ」
「最近光熱費高いって父さんに怒られたんだけど」
「じゃあ許してーって私が言っとく」
「……許しそうだけどなんかイヤだ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 429人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こむ(プロフ) - ににさん» ににさま、コメントありがとうございます！大変遅くなってしまってすみません(T＿T)すほさんのお話気に入っていただけたようでとても嬉しいです！私も好きなのでつい書いてしまいました。笑 今のところ続きはご想像にお任せしておきますね……(#^.^#) (2019年5月8日 0時) (
レス) id: 8ae68e1cd2 (このIDを非表示/違反報告)
にに(プロフ) - スホさんのお話、大好きです。こういう闇的展開。悪魔だと思ってた人が天使で、その逆もしかり。続編があったらいいなと思います。 (2019年4月20日 11時) (レス) id: 4f645da4fc (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - きな子さん» うえ〜ん；；ずーっとお付き合いいただき、本当にありがとうございますー！！めちゃくちゃ嬉しい…こちらこそ感激です(*ToT)こんな出会いや人がいる世界に生きたいものですね。妄想の世界っていいなぁ(笑)これからもお付き合いのほど何卒よろしくお願いします*^^*！ (2019年4月19日 20時) (レス) id: 8ae68e1cd2 (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - 雲丹さん» 雲丹さんセフンペンさんなのですね！おめでとうございます(#^.^#)セフンペンさんに読んでいただけて嬉しいです〜；；でもベッキョン先輩と付き合いたい(笑)セフンちゃんと付き合ったってくださいヽ(´ｰ｀ )ﾉ！笑 こちらこそ、いつもありがとうございます雲丹さん！！ (2019年4月19日 20時) (レス) id: 8ae68e1cd2 (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - マさん» コメントありがとうございます〜！幼馴染みセフンお読みいただけて嬉しいです；；そして相撲部屋のぶつかり稽古がツボにハマったようで……それを聞いて笑ってしまいました(^o^)笑 ベッキョン先輩の稽古は優しいんでしょうね^.^！お付き合いありがとうございました〜！ (2019年4月19日 20時) (レス) id: 8ae68e1cd2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こむ
| 作成日時：2019年4月7日 23時
