第八百三十四訓 ページ28
ざーーー、と肩や体全体に降り注いでくる雨。湿った土の匂い。波紋を生み出し広がっていく水溜まり。
それに映る私達と______
『…………懐かしいね』
立入禁止のテープが引かれた真選組屯所の、大仰な門。そしてそのテープは今、
______スパンッ、と。
鬼の副長によって、切り裂かれた。ふわりと重力に従って下へと落ちていくテープと露わになる門扉。
『……。』
土方「……。」
扉を開けようとしたトシの手は、震えていた。開けようとして手を伸ばし、寸前で辞めて。それを少しの間繰り返していた。
まあかくいう私も情けないことに足が少しばかり震えているのだけれど。
(でもこれは私達が決めた道。自分達で開かなきゃならない)
だから、だから______
.
___________「忘れもんか」
『「!」』
不意に横から声がする。そこには万事屋が無くなってからすっかり見なくなっていた銀時君の姿があって。
『……銀時、君…野暮な質問だね』
土方「……まあだが、そんなとこだ。けれど取り戻せば……そいつが最後になる」
『……、』
"ここを開ければ"、
土方「もう二度とここへは帰ってこれねえ」
……少し、頬がむず痒くなった。喜々に叩かれた所だ。何故かむず痒い。痒くて仕方ない。痛くなってくる程に。
『っ、』
銀時「……大丈夫か?忘れ物に怖気付いて古傷まで痛くなってきちった?」
思わず頬を拭う様な動作をすれば、銀時くんに止められた。トシもちらりとこちらを見てるし。そんなに喜々に叩かれているのが見てられなかったのかな。
『……まあ、普段私は忘れ物なんてしないからね。こんなに人を憎んだのも久しぶりでさ…おかげで頬も痒くなってくる所存で。自分がホント、汚く見えてくる』
汚い、汚いな。喜々にまで薄汚いと言われた。確かに私の魂は汚れているけど…でも江戸を護って散れるのだから____
銀時「お前は綺麗だよ」
『っ、え』
土方「自己肯定感が低い野郎だなお前は」
『んな!?私野郎じゃないし!』
不意にするりと銀時くんに手の甲で頬を撫でられて、思わず目線をあげれば優しそうな彼と目が合った。
銀時「汚いなんて言うなよ、俺に失礼だ。お前は最高にいい女なんだから」
『ぁ、』
…………忘れ物も、悪くないかもしれない。
ー
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じま。(プロフ) - えええオープンチャット!?入りたい…😭もう遅いかな…、申請送っておきます😭🙏 (3月19日 19時) (レス) @page50 id: 612ca8c02a (このIDを非表示/違反報告)
きょきょ - 夢主なんか嫌いなんすけど。弱くて弱くてもう面白くないですねw (9月25日 20時) (レス) @page24 id: c9d0d6f436 (このIDを非表示/違反報告)
リンリンゴ(プロフ) - 我等のトスィがイケメンすぎて無事に爆死いたしましたよ???覚悟してたけど思った以上にきたわ貴方の文才に感謝感激雨あられ。推しの生きろって名言よね(?)いや、虚、、、見事に想像の斜め上70℃をいったよ。守って登場するとかダークヒーローか貴様は。まじ愛す好き (2022年8月9日 2時) (レス) id: ff84f7ea91 (このIDを非表示/違反報告)
実珠(プロフ) - リンリンゴさん» 遺して行かんでよろしいwwwwwwww面白いけどwwww今日も無事にって毎日死んでんじゃんそれwありがとうございます(?)wwトッシー楽しみにしててねん!!! (2022年8月9日 1時) (レス) id: 5eb1e7fab0 (このIDを非表示/違反報告)
リンリンゴ(プロフ) - 書ける時はここに遺書を遺していこうと思い現在書き留めております。今日も無事に昇天いたしましたことをここにご報告させて頂きます。とーしって何ですか?貴方って人はほんとにかわいいですね??アンタ呼びもツンツン要素多めで愛しいです。次の更新トシ主役だぁぁぁ (2022年8月8日 2時) (レス) @page47 id: ff84f7ea91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:実珠 | 作成日時:2022年7月5日 20時