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小学校に入学した。
入学当初からその”黒い影”はいるらしく、一部の児童は怖がって近寄らなかったり、面白がって触ろうとしたり、と、黒い影の方に興味を持っている児童も少なくなかった。
隣りのクラスからわざわざみに来る児童もいるくらいで、一か月としないうちに他の学年にまで話が渡った。
「Aちゃん、そこにいるクロのえをかいてみてよ」
「いいよ。ここにいてくれる?」
『りょーかい』
黒い影がそこに移動する。
周りの児童は不思議そうに見ていた。
「できた!」
”じゆうちょう”に丁寧に描かれたのは、白っぽい髪に、黒の仮面、黒いフードをかぶり、背中に大きな鎌を持った”死神”のような男であった。
「かっこいい」
「え、じょうずだね!」
「ありがとう」
――翌年。
新一年生へ”クロ”の噂が耳に届くのは、そう遅いものではなかった。
半年もしないうちには皆知っている。
先生方はそれをあまりよく思っていない様子ではあったが、特に低学年を中心に「クロがいる」と言うので、どうにもならなかった。
高学年には見えるという人と見えないという人がいたりして、先生の中にも見える人、見えない人がいるのである。
「しかし、学校問題ですよね」
「授業中にもいるらしいですし」
「テストの時なんかはカンニングになってしまうのでは」
「今日コピーしてきた資料を配りますね」
職員会議ではたびたび話題に上がる”クロ”の話。
注意しに向かった先生がその日のうちに救急車で運ばれたりしているために、あまり直接”クロ”と話すことは禁忌とされているのであった。
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作者名:koto | 作成日時:2018年1月22日 23時