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「見る?写真」
「…うん、見たい」
優太くんに腕を引っ張られて身体を起こす。
彼も隣に腰掛けて、撮影した写真を画面に映し出すとカメラごと手渡された。
それを、一枚ずつ見ていく。
朝日に照らされた横顔と、伏せた睫毛の輝き、とか。
潮風に靡く髪を片手で抑えて振り向く私の、頰に咲いた恥じらいだとか。
優太くんを波打ち際まで誘い込んだ時の目は確かに挑発的で、悪戯っぽいのに大人っぽくも見えたし、
それから砂浜に寝てカメラを見上げる表情は、まるっきり私の知ってる私ではなかった。
上気した頬も、
ゆるんだ赤い唇も、
濡れて光る瞳がつくる溶けてしまいそうな視線も。
思わず目を背けたくなったのは、それが何だか、
何というか…、ひどく煽情的なものに見えたからだ。
自分で自分に対してこんなことを思うのはおかしいんだろうか。
そう思い再び画面の中に残った画を見るけれど、やはりそれは私の主観に基づいた見誤りなんかではないように感じた。
優太くんの目にこんな顔をした私が映っていたのかと思うと、熱が身体の中心からまた上の方へと上がってきて、どうにもこうにも泣きたくなる。
「…私じゃ、ないみたい」
これまで見たことのなかった、自分の顔。
知らなかった私。
「やっぱり、ほら」
「え?」
「Aの方が、橘菫よりも綺麗だろ」
「それは…、」
そんなことは、あるはずがない。
絶対にあるはずがないのに。
優太くんがそう言うのなら本当の本当に少しだけ、そんな気さえしてくる。
あの夏、私の世界を変えた菫ちゃんの写真を思い出す。
当時の私は彼女のことなんて何一つ知らなくて、それから、目にして記憶していた彼女の特徴を頼りに一生懸命調べ上げ、ようやく橘菫という名前に辿り着いた。
スクラップは今も私の部屋に大切にしまってある。
あの時の菫ちゃんと、同じ場所。
同じような格好。
顔のつくりもスタイルも、年齢だって全く違うけれど。
あの日私が彼女に対して感動した、視線を奪う唯一無二の存在感と、それゆえに周りの景色をも変えられる力。
それが、画面の中の自分にもあるような気がした。
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こむぎ(プロフ) - sarusukiさん» 2はフラグが立ってるので、問題ないようであればご自身で設定をお願いします! (2018年6月17日 18時) (レス) id: c18b3d0fe1 (このIDを非表示/違反報告)
sarusuki(プロフ) - パート2の方が見られなくなってしまいました!!見られるようになりませんか?涙 (2018年6月17日 17時) (レス) id: bd649719ef (このIDを非表示/違反報告)
こむぎ(プロフ) - 湊さん» ありがとうございます!この話は書きたい描写が多すぎるので、できるだけくどくならないように気をつけたいと思ってました…!多分まだまだ続くのでこれからもお付き合い頂けると嬉しいです〜! (2018年5月20日 16時) (レス) id: ae12cda8c1 (このIDを非表示/違反報告)
湊(プロフ) - こむぎさんの書くお話大好きです!!諄くない、綺麗な文章を書く方だなぁ、といつも思ってます。これからも更新楽しみにしてます! (2018年5月17日 13時) (レス) id: 5d99fecd0e (このIDを非表示/違反報告)
こむぎ(プロフ) - ゆりーるさん» わーいありがとうございます!3人のもともとの強すぎる個性を殺さないようにキャラ作れたらなぁと思ってるのでそう言って頂けてめちゃくちゃ嬉しいです〜!これからもよろしくおねがいします! (2018年3月3日 15時) (レス) id: 599e963edf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こむぎ | 作成日時:2018年1月3日 11時