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カウンターから身を乗り出して、割り入ってきたのは玄樹くんだった。
「ねぇ、俺の絵も見てよ！」
美大にもいろんな学科があると聞くけれど、彼は絵を描く人なのか。
拗ねて怒ったような顔をしてみても玄樹くんは可愛いからすごいなぁと、思わず綻ぶ顔で首を縦に振った。するとすぐにカウンターの中から外へぐるりとまわって、私の手を掴んで連れて行ってしまう。
引っ張られるまま細く暗い階段を上り、通された二階の一室は彼のアトリエだった。
そこに置かれたいくつものキャンバス。
中でも自信作だと言って彼が指差すその絵に、言葉を失った。
…これは、何だろう。
お皿に乗った果物…いや、人の顔？
青、オレンジ、黄、緑、赤。
その曲線、直線、折れ線で構成される不思議な世界。
前衛的というか…いわゆる抽象画、というものなんだろうか。
「これはね、"青春への憧憬"と"怠惰"」
さっぱり分からなかった。
とりあえず、果物でも人でもないのね。
誇らしげな玄樹くんには心から申し訳ないが、この絵に対して、良いも悪いも、好きも嫌いも、何かを思うほどのセンスと知識を私は持ち合わせていなかった。
「こ、個性的だね」
苦し紛れの薄っぺらなコメントだったが、それを聞いて玄樹くんは満足げだった。よかったと思う。顔が可愛い。
ふと、凡人の私では理解できないそれも、素敵な写真を撮れる優太くんになら分かるのだろうか、と思う。
部屋の入り口に立つ彼に視線を移せば、まるで興味がなさそうな大きな大きな欠伸が見えた。どうやら分かっていないらしい。
そこからは、玄樹くんの作品の展覧会が絶えず続いた。
その中には絵だけでなく、石膏のオブジェや、ぐるぐるした紐の塊のようなもの、なんかもあった。
その全てが私にはよく分からなかったけれど、目を輝かせながら熱を込めて語る玄樹くんの顔は可愛いし、優太くんが二階まで持って上がって来てくれたお酒は甘くて美味しいし、些細なことでいちいちぶつかる二人のやりとりはたまらなくおかしかった。
お酒ってすごい。
小さなことがばかみたいに面白く思えた。
「楽しいなぁ」
私がそう言えば、玄樹くんが笑う。
優太くんも笑う。
楽しいな。
なんて素敵な夜だろう。
二人の笑い声が頭の中に響いて、全身が幸せな気持ちに包まれる。
ふわふわと宙に浮いて行くような、ひどく幸せな気持ち。
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こむぎ(プロフ) - sarusukiさん» 2はフラグが立ってるので、問題ないようであればご自身で設定をお願いします！ (2018年6月17日 18時) (
レス) id: c18b3d0fe1 (このIDを非表示/違反報告)
sarusuki(プロフ) - パート2の方が見られなくなってしまいました！！見られるようになりませんか？涙 (2018年6月17日 17時) (レス) id: bd649719ef (このIDを非表示/違反報告)
こむぎ(プロフ) - 湊さん» ありがとうございます！この話は書きたい描写が多すぎるので、できるだけくどくならないように気をつけたいと思ってました…！多分まだまだ続くのでこれからもお付き合い頂けると嬉しいです〜！ (2018年5月20日 16時) (レス) id: ae12cda8c1 (このIDを非表示/違反報告)
湊(プロフ) - こむぎさんの書くお話大好きです！！諄くない、綺麗な文章を書く方だなぁ、といつも思ってます。これからも更新楽しみにしてます！ (2018年5月17日 13時) (レス) id: 5d99fecd0e (このIDを非表示/違反報告)
こむぎ(プロフ) - ゆりーるさん» わーいありがとうございます！3人のもともとの強すぎる個性を殺さないようにキャラ作れたらなぁと思ってるのでそう言って頂けてめちゃくちゃ嬉しいです〜！これからもよろしくおねがいします！ (2018年3月3日 15時) (レス) id: 599e963edf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こむぎ
| 作成日時：2018年1月3日 11時
