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You
午前5時21分。
坂の上にある郵便ポスト。
人気のないこの時間と場所を選んだ。
どこまで行っても知ってる人間と、知ってる景色しか存在しない小さな小さなこの島で、出来る限りなにものにも見つからずに済むように。
辺りに誰もいないのを確認して、少しだけ震える手で薄紫の封筒を投函する。
薄紫は、
――やってしまった。
とうとうやってしまった！
そのまま自転車に飛び乗り、島で一番急なその坂道を一気に駆け下りる。
潮風が額の汗を乾かす。
ぐんぐんスピードが加速するのに比例して、私の鼓動も早くなっていく。
どうしよう。
こんなにドキドキするの、生まれて初めてだ。
走りながらこうして見下ろす海だって17年間飽きるほどに見慣れた景色のはずなのに、それが心なしか特別なものに感じられる。
水面に反射する朝陽の光が、何だかいつも以上にキラキラ輝いて見えた。
坂道の途中の、一瞬。
ほんの一瞬、見知らぬ顔とすれ違った。
外の人だ。
大仰なレンズのカメラを手に持った若い男の人。
男の人だけど、男の人じゃないみたいに大きくくっきりとした二重まぶたの目。その目と、ぱちっと音を立てて視線がぶつかったような気がした。
本当に一瞬だったのに、不思議だ。
そのカメラで海を撮っていたんだろうか。
だとしたら、やっぱり気のせいなんかじゃなく今朝の海は誰の目にもとびきり綺麗なんだろうと思った。
下り坂にも終わりが見え、緩やかにブレーキをかける。
自転車は減速していくのに心臓のドキドキが治まらない。
吸って、はいて、呼吸を整える。
ポストに入れたのは東京の芸能プロダクションに宛てた写真と履歴書だった。
私の女神様、モデルの
所属タレントを募集している時期でもない上に、こんなただの田舎娘が目に止まるわけがないってことは分かってる。
特別顔が綺麗なわけでもスタイルがいいわけでもない私なんかが、世界で一番美しい菫ちゃんと同じステージに立てるだなんて、そんな夢みたいなことを本気で思っているわけじゃない。
ただ。
変わらない毎日と、当たり前の平穏と、先の決まった未来に少しだけ、本当に少しだけ、何か違うことをしてみたくなったのだ。
私は明日、18になる。
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こむぎ(プロフ) - sarusukiさん» 2はフラグが立ってるので、問題ないようであればご自身で設定をお願いします！ (2018年6月17日 18時) (
レス) id: c18b3d0fe1 (このIDを非表示/違反報告)
sarusuki(プロフ) - パート2の方が見られなくなってしまいました！！見られるようになりませんか？涙 (2018年6月17日 17時) (レス) id: bd649719ef (このIDを非表示/違反報告)
こむぎ(プロフ) - 湊さん» ありがとうございます！この話は書きたい描写が多すぎるので、できるだけくどくならないように気をつけたいと思ってました…！多分まだまだ続くのでこれからもお付き合い頂けると嬉しいです〜！ (2018年5月20日 16時) (レス) id: ae12cda8c1 (このIDを非表示/違反報告)
湊(プロフ) - こむぎさんの書くお話大好きです！！諄くない、綺麗な文章を書く方だなぁ、といつも思ってます。これからも更新楽しみにしてます！ (2018年5月17日 13時) (レス) id: 5d99fecd0e (このIDを非表示/違反報告)
こむぎ(プロフ) - ゆりーるさん» わーいありがとうございます！3人のもともとの強すぎる個性を殺さないようにキャラ作れたらなぁと思ってるのでそう言って頂けてめちゃくちゃ嬉しいです〜！これからもよろしくおねがいします！ (2018年3月3日 15時) (レス) id: 599e963edf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こむぎ
| 作成日時：2018年1月3日 11時
