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荷物を引っ掴んで浮所くんが走り去って行った後、教室に残された私には立ち上がる気力もなかった。何もかもが億劫で、何か一つ言葉を口にすることすら無理だと感じた。
教室の中には那須くんが同じように無言で立ち尽くしていた。おかしな場面に立ち会わせてしまって申し訳ないと思う。けれどそれを気遣えるほどの余裕は今の私にはなかった。
「……あの、」
声をかけられた方へ顔だけ向ける。那須くんは私を見て、眉間に皺を寄せると一瞬でバッと顔を背けた。
ボタンが取れて前の開いたシャツのまま床にへたり込む私はさぞみっともないだろう。彼はそのまま走って教室を出て行ってしまった。
指導もまともにできないうえに、生徒に、彼からすれば友人である浮所くんに色目を使って、とか、軽蔑されただろうか。きっとまた嫌われた。けれどもうそれもどうでもいい。全てが嫌だ。
あぁ、でも、あの状況で私を助けてくれたのは彼なのだからせめてありがとうの一言くらいは言うべきだった、と後になって思う。
壁に背を預けて、足を投げ出して、ただ呆然としていた。「最低」と言った浮所くんの声が頭にこびりついて離れなかった。確かに彼に見られたあの時のあの私は教師としても大人としても最低だ。言い訳のしようもない。
それから、なぜ作間くんなのか、と問われた。
浮所くんは私が作間くんと付き合っているから、好きだからああいうことをしていたと思っていて、それで、そのことが彼を傷つけたというんだろうか。
泣いていた。
泣くほどに彼を傷つけた、のか。
どうして私なんだろう。
彼にそんなにまで思ってもらうほどの価値は私にはない。
浮所くん。
かわいそうな子だ。
どうしても彼のことは子どもだとしか思えないから、これまで恋愛対象として見ようとして失敗してきた相手のように、好きだと言ってくれた彼のことを価値のない人間だと思うようなことはなかった。
けれど、でもただ、かわいそうだなと思う。
本当に、なんで私なんか。
両手で顔を覆って、目の端に残っていた涙を拭う。閉ざされた視界の中再び戸の開く音がした。
手を退けるとそこに那須くんがいた。
走って戻ってきたのか、息が切れている。
忘れ物だろうか。何だか気まずいなぁなんて思っていると、早足でこちらへ近づく。
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よぴ(プロフ) - パスワード教えていただきたいです（ ; ; ） (2022年1月17日 19時) (
レス) id: 5c59f9ee59 (このIDを非表示/違反報告)
いち - パスワード教えてください⁉️ (2021年9月28日 13時) (レス) id: 358f9d64ec (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - こむぎさんの作品いつも楽しく読ませていただいています。この作品を最初から読みたいのですがパスワードを教えていただくことはできますか？ (2021年5月5日 2時) (レス) id: 3b72a96203 (このIDを非表示/違反報告)
りの(プロフ) - どの作品も大好きです！いつもキュンキュンしながら読ませて頂いています。これからも楽しみにしています。 (2020年5月3日 21時) (レス) id: e6fd1d12b5 (このIDを非表示/違反報告)
陽依(プロフ) - 切なくて切なくて、涙が出てきました。このお話大好きです。これからも楽しみにしています。 (2020年5月3日 19時) (レス) id: 5f72745e3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こむぎ
| 作成日時：2019年7月21日 14時
