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「あー…」
数秒の間、俯いて考え込むようにしていた。
それから両手にそれぞれ布巾とズボンを持って歩き始める。ものすごく微妙な顔をして、どういうわけか俺の周りをぐるぐると回り出す。
「え、なに?」
「あー……あの、」
「うん」
「あのー…」
「…うん?」
「怪我とか病気とかじゃない…あの……」
言いかけて、ぴた、とAの足が止まる。その位置に俺も体を向ける。
丸い大きな瞳が俺を見上げる。
それから蚊の鳴くような声で口にした、単語。
「んえ!?!?」
これまでの人生で出したことのないような種類の声が出た。
「あ、そ、そそ、そう」
「……」
「そうか、そうだな、……そうね、うん。なるほどね」
これまでの俺たちの暮らしにはまるで馴染みのなかったその単語に、バカ正直に動揺する。
そうか。なるほどな。なるほどってなんだ。
でももうそういう歳だもんな。普通に。いや、普通に、そうだよな。
今朝早くからバタついていたのはそういうことか、と思う。きっとAだって初めてのことで戸惑っているはずだ。俺は男だから全く知識はないけれど、でもそれは言い訳にはならない。普通なら女親がしてやるようなことだって、俺がその代わりにならなければいけない。
「なんか、あの、買ってこようか?あっでも俺一人じゃ分かんないから一緒に…、え、あ、ていうか動いて大丈夫か?そんな家事とかして平気な、」
「優太くん落ち着いて、大丈夫。そんな、身篭ったわけでもあるまいし」
「っ!みご、」
「落ち着いて、想像しないで」
「……お、落ち着いてるよ!」
全く落ち着いていなかった。
対応の正解が分からない。ここ数年、Aが小学校高学年に上がったくらいからはもう育児書なんかを読むことも少なくなったけれど、あぁくそ、こういう時のことについてもちゃんと勉強しておくべきだった、と思う。
「大丈夫。なんか、そろそろそういうものかなとも思ってたし、準備…、してあるから」
当の本人は俺の300倍は落ち着いていた。
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りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています!これからも楽しみにしています。 (2019年9月30日 0時) (レス) id: 2bc4477fb2 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - 急といえば急だけど、当然といえば当然な感情な感じです。だって、岸君がずっと側で、愛情たっぷりで、まっすぐで…思春期な女子じゃなくても…なりますよね。益々目が離せません!更新楽しみにお待ちしています。 (2019年9月18日 21時) (レス) id: 6b92244ddf (このIDを非表示/違反報告)
ゆっちゃん(プロフ) - 優太くん目線で楽しませて頂いています。2人が幸せになれる事を祈っています。更新頑張ってください。 (2019年9月16日 22時) (レス) id: 8464dfffe9 (このIDを非表示/違反報告)
みづきてぃー(プロフ) - このシリーズ大好きです!!たまに出てくるじんくんも好きです(笑)もどかしくて、キュンキュンする!続きが楽しみです! (2019年8月16日 2時) (レス) id: 3752f8da94 (このIDを非表示/違反報告)
すばる - すごく好きな展開です!表現力がありお話の雰囲気に一気に引き込まれました。この先二人がどうなっていくのかとても楽しみです。 (2019年8月13日 17時) (レス) id: 62d9628bcb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こむぎ | 作成日時:2019年7月16日 18時