検索窓
今日:19 hit、昨日:6 hit、合計:313,520 hit

やくびょうがみ 篇 −18歳と7歳− ページ11

.




本当に一人になってしまった。



花に囲まれた遺影の中でにこやかに微笑む姉と義兄を見つめてそう思った。報せを受けてからは、都内から駆けつけて、遺体を確認して、葬儀の手配をして。何が何だか分からないままにいろんなことが目の前を過ぎて行ったから悲しみに浸る間もなかった。ふと隣を見たときに、自分と同じような表情をした子どもの存在に気づく。“一人になってしまった”と、そんな顔をして呆然とそこにいる。それは、姉夫婦が3年前から養子として引き取り育てていた女の子だった。確かまだ小学校に上がったばかりとか、そのくらい。戸籍上は俺の姪にあたる、んだと思う。姉は遠方に嫁いでいたから、顔を合わせるのもこれが3回目くらいだった。見ていると不意に視線が合って、それからすぐに俯かれてしまう。
姉夫婦のことは、一応、“両親”と思っていたんだろうか。

その子は病院で会った時も、納棺の際も、葬儀中も泣くわけではなかった。ただ、精気を失ったようではあって、ぼんやりとしていた。死ぬ、ということがどういうことかまだ分からないものなんだろうか。そうも思ったけれど、彼女はそのもっと昔に本当の親をそれもまた事故で亡くしている。少しの間施設で過ごし、子どもがほしかった姉夫婦に引き取られた。二人の他に身寄りはない。
俺も小さな頃に両親を事故と病気とで亡くしていた。姉は最後の、唯一の肉親だった。



会食の席で、大人たちの話題は専ら子どものことだった。



「どうするの、あの子」
「どこも面倒なんて見れないでしょう」
「こっちは無理よ。まだ向こうの親族の方が若いんだし、」
「施設に戻せばいいんじゃないの?元々血のつながりがあるわけでもないんだもの」
「何か不気味よね。本当の親も交通事故で亡くなって、それで引き取ったあの子たち夫婦がまた交通事故だなんて…」



本人たちは小声のつもりなんだろうか。
それから義兄の母が近づいてきて俺に耳打ちする。



「すぐにでも引き取ってくれる施設を探した方がいいと思うんだけどどうかしら。今日明日くらいならうちで預かってあげてもいいけれど、」





.

.→←.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (830 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1135人がお気に入り
設定タグ:岸優太 , King&Prince
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています!これからも楽しみにしています。 (2019年9月30日 0時) (レス) id: 2bc4477fb2 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - 急といえば急だけど、当然といえば当然な感情な感じです。だって、岸君がずっと側で、愛情たっぷりで、まっすぐで…思春期な女子じゃなくても…なりますよね。益々目が離せません!更新楽しみにお待ちしています。 (2019年9月18日 21時) (レス) id: 6b92244ddf (このIDを非表示/違反報告)
ゆっちゃん(プロフ) - 優太くん目線で楽しませて頂いています。2人が幸せになれる事を祈っています。更新頑張ってください。 (2019年9月16日 22時) (レス) id: 8464dfffe9 (このIDを非表示/違反報告)
みづきてぃー(プロフ) - このシリーズ大好きです!!たまに出てくるじんくんも好きです(笑)もどかしくて、キュンキュンする!続きが楽しみです! (2019年8月16日 2時) (レス) id: 3752f8da94 (このIDを非表示/違反報告)
すばる - すごく好きな展開です!表現力がありお話の雰囲気に一気に引き込まれました。この先二人がどうなっていくのかとても楽しみです。 (2019年8月13日 17時) (レス) id: 62d9628bcb (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:こむぎ | 作成日時:2019年7月16日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。