baby I love you

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子どもは一番端の席に座って、ひとり大人しく食事を摂っていた。俯いた顔の表情は見て取れない。何を考えているのか分からない。



「あの子を孫とは思えないし、正直みんなが言うように、気味が悪いわ」



その場面には妙な既視感があった。自分の母が亡くなった時。俺たち姉弟を四方から、明らかな“面倒ごととして”見つめる視線。その面倒ごとが己に降りかからないようにと必死な大人たち。

大人が「どうせ子どもだから分からないだろう」と思って口にする言葉は、案外子どもからしたって分かるものなのだ。全ての意味を理解できなくたって、そこに込められている感情や悪意の類を感じ取るのはそれほど難しいことじゃない。

あの子どもが何を考えているのかは分からないし、本人がどうしたいのかなんて見当もつかない。でも、何でもいいからとにかく今、反吐が出そうなくらいに気分の悪いこの話題を終わらせたかった。



「僕が一緒に暮らします」



立ち上がってそう言えば、その場の空気が一瞬にして固まり、無音になる。

それから皆、口を揃えて一斉に無茶だと言った。犬や猫を飼うのとはわけがちがうんだからと。未成年のくせに何を言ってるんだと。まだ高校生の上に、仕事が仕事なんだから無理に決まってると。

確かに無茶かもしれない。けれど、俺のことを心配する体のその言葉にはきっと、面倒が自分たちへ飛び火することに対しての恐れという意図の方が多く含まれていた。



そのまま子どものそばへ歩いて行く。しゃがんで、目線を合わせる。



「俺んちで暮らそう」
「……」
「嫌？」



Aは目を丸くして驚く。それから首を振り、嫌じゃないということだけをただ伝えた。





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