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13.放浪少年の虎様。 ページ13

そこから焦る敦と相変わらず飄々とした態度の太宰が会話を続けていく。何時しかのバックパックを背負い直した詞葉は、不安そうに其を眺めていた。


「そもそも変なんだよ敦君。」


太宰の本を閉じる音が静かに木霊した。


「経営が傾いたからって養護施設が児童を追放するかい?
大昔の農村じゃないんだ



いや、そもそも経営が傾いたなら一人二人追放したところでどうにもならない。
半分くらい減らして他所の施設に移すのが筋だ。」


「まぁ…確かにね。」
「太宰さん何を…言って…」

察し始めた財団職員と不安を隠しきれない放浪少年の声が重なる。不協和音の様に不吉に響いた。それでも太宰は続けた。


「君が町に来たのが二週間前」

敦がふと顔を上げる。空に釘付けになる。


「虎が街に現れたのも二週間前」


目を見開いて、飛ぶ程の鼓動に身体が跳ねる。


「君が鶴見川べりにいたのが四日前
 同じ場所で虎が目撃されたのも四日前」


異様に変わって行く敦の姿に詞葉は何故か心を痛めた。可哀想だと思った。

呻き声が、聞こえる。


「国木田君が云っていただろう。武装探偵社は異能の力を持つ輩の寄り合いだと。
世間には知られていないがこの世には異能の者が少なからずいる。


その力で成功するものもいれば…」



「あーあ…。成る程ね…」



「力を制御できず身を滅ぼす者もいる。」


「異能、か。アノマリーとは違うのか…?」


「大方施設の人は虎の正体を知っていたが君には教えなかったのだろう。

 君だけが解っていなかったのだよ。」


「君も異能の者だ。」


木箱の裏に隠れ、息を潜める。財団職員も落ち着いてられなかった。衝撃だった。こいつは、異常だ。人間型の、アノマリー。しかしながら、混乱していた。部が悪いだけ、確保の「か」の文字が浮かんだら職務を全うすると、誓う。


「現身に飢獣を降ろす月下の能力者___ 」



中島敦は、虎だったのだ。

14.虎と無効化能力様。→←12.虎が怖い放浪少年様。



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なしりんご(プロフ) - こころさん» ありがとうございます!!少し遅くなりそうですが、主人公が探偵社入社と同時に、番外作ろうと思いますので、亀更新ですが暖かい目で見て頂けると有りがたいです! (2023年2月5日 23時) (レス) @page11 id: 70d5ff20c0 (このIDを非表示/違反報告)
こころ - 英検お疲れ様です!更新お疲れ様&待ってます! (2023年2月4日 18時) (レス) @page11 id: fa05d75225 (このIDを非表示/違反報告)
こころ - ありがとう御座います…! (2022年12月30日 15時) (レス) @page9 id: fa05d75225 (このIDを非表示/違反報告)
なしりんご(プロフ) - こころさん» コメントありがとうございます!とても励みになります。そうですね、アベルやカインなど、人型のオブジェクトはどうしても原作に寄せれないのでちょくちょくこっちで匂わせて、番外編など作ろうと思っております!お待ちください! (2022年12月29日 22時) (レス) id: 70d5ff20c0 (このIDを非表示/違反報告)
こころ - 初コメ失礼します!更新待ってます!因みにカインとアベルって出せますか…? (2022年12月29日 8時) (レス) @page5 id: fa05d75225 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なしりんご | 作成日時:2022年12月28日 11時

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