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「どういうことや?」

 訳がわからない、と言うような、困惑した表情をしながら京雪は女に尋ねた。どうやら、彼女が呼ばれる前にもう1人、男の人が呼ばれていたようだった。そして、天音紅羽と生崎琉がすれ違ったように、女と先に呼ばれていたという男もすれ違ったのだ。男の前に呼ばれていた東雲颯斗も、男とすれ違ったため、てっきり次に来るのは男の人だと思っていたのだ。

「帰っちゃったの?」
「それはない」

 蜘蛛川巴の発言に間髪入れず答える生崎琉。玄関はあったが、その奥は木ばかりで、この建物は森の中にあるということを皆に説明した。

「私も見たけど、帰ろうとは思わなかったよ」

 佐久間澪もそう言ったことにより、帰ったという説は消えていった。結局、いきなり殺し合いをさせられそうになって、気持ちを落ち着かせたかったから部屋に戻った、という話でまとまった。「名前を言いそびれたな」と言い、先程きた女性が名前を教えてくれた。

「皇・セリュール・夜宵だ」

 彼女が自己紹介をしたと同時に、食堂に二人の男が入ってきた。片方の男の顔を見て、東雲颯斗と皇・セリュール・夜宵は、声にこそ出さなかったがすれ違った人だということに気づいた。彼は、あからさまに不機嫌そうな顔をしている。そんな彼に反して、隣にいる男は明るく、ニコニコとしていた。

「俺は立花樹(たちばないつき)! で、こっちの人は〜……」

 そう名乗った立花樹はそーっと瞳だけを横に動かす。

「名前でしたよね。白鳥拓磨(しらとりたくま)です」

 眼鏡の奥に見える冷たい瞳がその場にいた全員が凍り付く。しかし、当の本人はさほどこの空気を気にせず「部屋で考えようと思ってたんですけどね」と言いながら食堂にある椅子に座った。おそらく、『colosseum』の仮想世界で使うアバターを考えようとしていたのだろう。部屋で考えようとしていたのに、なぜ食堂に来たのか。それについては、本人ではなく立花樹が教えてくれた。人がいなくなった部屋はひとまず鍵をかけているみたいだった。理由は彼らを集めた犯人が食堂に招集しているからだろう。

「どのみち、食堂で待機してるしかなさそう、だね……」

 しょんぼりとしながら天音紅羽がつぶやく。しんみりとした空気になった。何か言おうにも、言ってしまえばその場しのぎの慰めになるだけだと、皆 心の中ではわかっていた。だが、そんな空気は1人の男によって一瞬にして変わってしまう。

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作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/utahakiku08/  作成日時:2019年7月7日 14時

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