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「そちら、引き出しのロックは指紋認証で解除されますので、別の方のところを押しても何もなりません。ここから出た後は食堂へお向かいください。それでは、また一週間後にお会いしましょう」

 それ以降、スピーカーから声が聞こえることはなかった。ここにいてももう意味がないと思った天音紅羽は、指紋認証でロックを解除して小型タブレットを手に取った。やや大きめのスマートフォンのようなもので、片手で持てるサイズだ。食堂に行ってから色々と決めようと考えた天音紅羽は、すぐに部屋から飛び出し、食堂であろう場所へと向かった。その最中、彼女の目の前にはもはや殺し合いのことしか考えておらず、人とすれ違ったことなど覚えていないくらい思考は殺し合いのことばかりであった。

 時間は戻り、天音紅羽と同じ説明を受けた生崎琉は食堂に着いたのだった。彼の足音を聞いた天音紅羽は『タブレットなど恐ろしくてとても触れそうにない』というようにタブレットをテーブルの上に置いたままにさせる。といっても、あまり他人に興味のない生崎琉にとっては、天音紅羽のこの行動など無意味に等しいのだが。

「あ、あの、私、天音紅羽っていうんだ。名前を聞いてもいいかな……?」

 天音紅羽が生崎琉に声をかけると、彼は横目で天音紅羽を捉えると自分の名前を口にした。が、お互い知らない相手のせいか、話が続くはずもなく、沈黙が二人の間に訪れる。

 そんな中、現れたのは京雪(かなどめそそぎ)と言う男だった。関西弁で話すのが特徴的な少年だ。彼は、2人を見るなりこう尋ねた。

「あのよくわからん奴が言うてたことにノリ気なん?」
「そんなわけ……」

 間髪入れずに生崎琉は答える。『よくわからん奴』というのはコロシアムについて説明していた人物のことだろう。少なくとも、生崎琉は渋々来たようだった。コロシアムについて説明していたであろう人物は、発言は録音したものだったのか、全員に同じ説明をし、誰の質問にも答えなかったということも判明した。

「わざわざ自分を犠牲にしてまで殺し合いをさせられる意味なんてないし」
「そ、そうだよ……。人を……む、ムリだよ……」

 生崎琉の発言に同調するかのように、天音紅羽は体を震わせながら呟いた。そんな2人を見ながら京雪はどうここから出るかを考える。話すこともなく、再び食堂内には沈黙が訪れる。

「お、やっぱり人がいる」

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作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/utahakiku08/  作成日時:2019年7月7日 14時

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