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◆ 第一章 【隠レビト】 ページ16

「……え? 私たち以外に、まだ人がいたの?」

 皐月 美乃が驚いた声をあげる。施設を調べ回り、皆が食堂に集まると、蜘蛛川巴がそう報告したのだ。かくれんぼの最中に話していた『301号室』のことが気になり、見に行ってみたらドア付近の廊下に、ここにはいない人のプロフィールが落ちていたという。櫛田まなかが聞いた内容のこともあり、301には人が住んでいるのでは、という考えに至ったようだった。

「でも、人がいる気配はない、よね」

 小首を傾げながら呟く天音紅羽。立花樹が「プロフィールを見せてほしい」と頼むと、蜘蛛川巴は拾ったプロフィールを見せてくれた。そこには『槙島 満(まきしま みつる)』という名前があり、その横に写真が貼られていた。プロフィールのはずだが、性別の記載がなく、そしてこの槙島満という人物も中性的な顔立ちをしており、性別の判断がつかなかった。この人物の職業は『役者』らしく、年齢は『20歳』と書かれている。また、適性診断という気になる言葉の横には二重丸がつけられていた。それ以降の文は文字化けの状態で印刷されており、解読できなかった。



「役、者……なら、誰か知ってる人、いない……?」

 灰島潤がそう尋ねるが、知っている者は誰もおらず、皆首を傾げるだけだった。役者といっても、あまり有名な人ではないようだった。

「収穫はこれだけですか」

 呆れたように言う白鳥拓磨。しかし、このプロフィールを見つけたこと以外何も進展がないのだ。ここから脱出する術は見つからず、解散ということになり各自やりたいことをやりに行ってしまった。誰もいなくなった食堂で1人、京雪は考えていた。どうここから出るか。荷物を持って山を下るにしては無謀すぎる。しかし、ネットワークの繋がらないここでは救助も呼べない。

 何かないものかと、ふと目に入った、蜘蛛川巴が拾ったプロフィールを裏返した。

「……ッ」

 軽い気持ちで裏返したプロフィールの裏には『騙されるな』という乱雑な文が赤字で書かれていた。ボールペンで書かれているせいか、赤色が鮮明に見えた。この『騙されるな』という言葉は、どういう意味なのか。槙島満が誰なのか。この施設の謎は、更に深まるばかりであった。

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作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/utahakiku08/  作成日時:2019年7月7日 14時

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