palette【オリジナル合作】 (ページ15)

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「それで今日はどこに行くんだっけ？」
「ん～・・決めてないし、適当にウィンドウショッピングでもする？」
「うん、別にそれでいいよ」
村とは言え、孤立した島に何もないわけじゃない。両手で数えられるほどだが、きちんと店のなりをした洋服店があるのだ。
しばしの無言が僕と雅姫の間を漂う。何か話題を振ろうと試みるも、喉につっかえたように出てこない。そうこうしているうちに店の看板が見えてきてしまった。
「・・あの、さ」
「ん、なに？」
雅姫は僕の方を見ることもせず、聞き返した。
「・・・・ううん、なんでもない」
「なぁにそれ。へんなの」

「何もないならこれ見てよ！可愛くない？」
そういった雅姫が指をさしたのは、桃色のカーディガン。丸い襟元にはレースちりばめてあり、飾ってあるショーウインドーから一段と目立って見えた。
「え、まぁ、うん」
確かに可愛いとは思う。でも僕はあっちの方が似合うと思うんだけどなぁ・・。僕の目線の先には青色のタンクトップ。シンプルでありながら、どこかかっこいいものを感じさせる。
「ふーゆき！今あっちの方が似合いそうとか思ってたでしょ！」
「う、わぁ！」
突然目の前にぐいとせまった雅姫の顔を見て、眼を見開き驚く。生暖かい吐息が僕の頬をざらりと撫でて首まで流れおちていく。高い鼻が僕の鼻に触れそうなところまで迫って、それは離れた。
「もー・・。ああいうのが似合うって言いたくなる気持ちもわかるけどさ」
つんとくちを尖らせて小さくぼやいたあと、そっぽを向いた。
そんな雅姫の挙動に構っていられるほど僕は冷静じゃなかった。バクバクと鳴る心臓の音は止まることを知らず、頬が熱くなっているのを感じる。今までこんなに接近したことがあるわけもなく、僕は自分でも驚くほど緊張していた。
一方の雅姫は僕のチョイスが気に入らなかったらしく、機嫌を損ねているようだった。
「あの、ごめん。そっちの洋服も似合うと思うよ」
「別にそういうのいいよ」
どう見ても怒っている様子の雅姫は、僕と目を合わせようとしない。しばらくそんな無言が空気を支配し、僕はただ雅姫が歩いていく方向についていくだけだった。

「・・うわぁ・・」
思わずそんな吐息を漏らす。この景色は何度見ても格別だと思う。
「・・・・」
雅姫の瞳の中に、真っ赤な夕日が映りこむ。それは存在を主張するようにきらきらと輝いていた。