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大きな水の塊が、勢いよく窓を叩きつける。ゴウゴウと吹く風は今にも家を吹き飛ばしてしまいそうで、リドルはテレビの目の前で『豪雨』の2文字を静かに眺めていた。
膝の上で静かに鎮座している上質そうな傘を目にして、深くため息を吐く。
『午後から雨だって。傘忘れちゃダメだねぇ』
それは今朝のこと。寝起き特有の間延びした声で、そうボンヤリと話していた姿が彼の脳内でリピートされる。
毛穴から大量の汗が噴き出し、チラリと目にした時計は18時30分を指していて、予定していた帰宅時間より1時間もオーバーしている。明らかにおかしかった。
リドルが時間にもルールにも厳しいことは、何度も何度も釘を刺していたためよくわかっているはずだ。なのに、これほどまでに遅い。
いつもは時間通りに帰ってくる人だから、余計に不安を掻き立てられる。いくら豪雨とは言え、タクシーなりなんなり、傘がなくても帰れる手段はあると思っていたのだけれど、異世界はまた違うのだろうか。1度しか外に出たことのないリドルには情報が少なすぎた。
しかも、何度電話をかけても繋がりやしないのだから心配は募っていくばかり。膝上の傘を見て、彼は静かに喉仏を上下させる。
「……いや、ルールを破るなんて悪だよ、リドル」
我慢をおし。自分自身を無理矢理にでも抑え込み、必死に納得させようとしたが、どう足掻いても人間は"本当の自分"に嘘をつくことが出来ない。正直、身体は今すぐにでも家を出ていきそうだった。
もし不埒者が彼女に近付いていたら?殺されてでもしたらどうなるんだ?いや、あれでも立派な成人女性だ。この世界の一般常識すら分からないボクが行ったところで足でまといになるだけ。分かっている、そう。冷静さを欠けるなんて──
『この国は、困っている人は見過ごせないんですよ。例外はあるけれど、少なくとも私は』
欠けるなんて、有り得ない。
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Collet(プロフ) - いろはさん» コメントありがとうございます!^^飯テロ小説初めてなので美味しいと思っていただけているのならとっても嬉しいです〜!わたしも国宝級イケメンと住みたいんですけどそんな世界線どこかにありませんかね…。 (2020年9月27日 17時) (レス) id: 0bc2fe8691 (このIDを非表示/違反報告)
いろは - もんのすごい食レポ上手いっすね...お腹すいてきました()リドルくんと住みたいぃぃぃい (2020年9月27日 16時) (レス) id: 783a9cd7e8 (このIDを非表示/違反報告)
Collet(プロフ) - まめさん» キレ気味笑いました!ありがとうございます!頭の中で喋っているリドルくんを書き起こしているだけの状態なので、私の解釈しかこもってないんですよ…。理想通りで嬉しいです!^^ 次回更新で続編に移るので、そちらもぜひ読んでください。 (2020年8月21日 0時) (レス) id: 0bc2fe8691 (このIDを非表示/違反報告)
まめ - 可愛いなぁもう!!!(キレ)めっちゃ理想どうりのリドルくんで感動してます!大好きです!更新がんばってください。応援してます! (2020年8月19日 19時) (レス) id: 9861be23cf (このIDを非表示/違反報告)
Collet(プロフ) - やなさん» ありがとうございます……ありがとうございます…リドル・ローズハートをどれだけ可愛らしく見せられるかチャレンジやってるので……"毎回楽しみにしている"とのコメントも、とっても嬉しかったです!書く気が起きました。よかったらまたコメントしてくださいね。 (2020年8月13日 2時) (レス) id: 0bc2fe8691 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Collet | 作成日時:2020年6月21日 10時