16 ページ16
.
ようやく警戒を解いてくれたのだ。いや、警戒を解いてくれたというよりも、解かざるを得なかったのかもしれないけれど。ふたつ分の足音が廊下に響く。
頼れるひとも、場所もない世界に強制的に連れられてきたのだ。そんな彼に残された選択は"死ぬ"か"Aの力を借りる"かしかなかったのだろう。
言うなれば、私は彼の恩人だ。この世界で生きていく手筈が整うまで、養ってくれる恩人。そんな人間相手に恩知らずな真似が出来ない男だと言うことを、律儀すぎる男だということを、私は知っていた。
何かの詐欺や、ネットショッピングに騙されそうなタイプである。
どれだけ我儘で高潔な女王様だとしても、中身は何も分からない子供のようなひとだということを──ゲームで事細かに描かれる"リドル・ローズハート"という人物の人柄を、気持ち悪くもしっかりとインプットしていた私は、途端に心配になってきた。
なんて、あれだけ気をつけていたにも関わらず、あっという間にみっともない姿を見せてしまった人間が言えることじゃないけれど。
カチリ、と入ってすぐ、扉の横にあるスイッチを押して、埃っぽい部屋にふたりして咳き込む。慌てて「物置なの、ゴメンね」と謝りながら、洒落っ気のない小窓を全開にして換気をした。先ほどの言葉の通り物置以外ではあまり使っていない部屋だったので、こんなに埃っぽいのだろう。
何の気なしにチラリと視線を動かすと、リドルくんは口を手で覆いながら、クローゼットに向かって近づいていた。少し困った表情も、哀愁漂う美少年といった様子でとても美しい。眼福である。
だがしかし。それを見て──なぜか私の脳は蕩けることなく、鼓膜が破れてしまいそうなほどの警報を鳴らした。そして、ひとつ引っかかりを覚える。
クローゼットは確か、知り合いから隠すために何か大事なものが入っていたような──
「ゔぁぁぁあ!?!!!?」
重大な問題に気がついた私は、クローゼットを開けようとしたリドルくんを必死に止める。彼は少し驚いたような表情をしたのち、訝しげな瞳のまま「なんだい」と、尋ねてくる。
なんだいもなにも、そのクローゼットの中には"リドル・ローズハート"本人のフィギュアなり、缶バッジなりなんなり、とにかく色々なグッズが陳列しているのだ。
332人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Collet(プロフ) - いろはさん» コメントありがとうございます!^^飯テロ小説初めてなので美味しいと思っていただけているのならとっても嬉しいです〜!わたしも国宝級イケメンと住みたいんですけどそんな世界線どこかにありませんかね…。 (2020年9月27日 17時) (レス) id: 0bc2fe8691 (このIDを非表示/違反報告)
いろは - もんのすごい食レポ上手いっすね...お腹すいてきました()リドルくんと住みたいぃぃぃい (2020年9月27日 16時) (レス) id: 783a9cd7e8 (このIDを非表示/違反報告)
Collet(プロフ) - まめさん» キレ気味笑いました!ありがとうございます!頭の中で喋っているリドルくんを書き起こしているだけの状態なので、私の解釈しかこもってないんですよ…。理想通りで嬉しいです!^^ 次回更新で続編に移るので、そちらもぜひ読んでください。 (2020年8月21日 0時) (レス) id: 0bc2fe8691 (このIDを非表示/違反報告)
まめ - 可愛いなぁもう!!!(キレ)めっちゃ理想どうりのリドルくんで感動してます!大好きです!更新がんばってください。応援してます! (2020年8月19日 19時) (レス) id: 9861be23cf (このIDを非表示/違反報告)
Collet(プロフ) - やなさん» ありがとうございます……ありがとうございます…リドル・ローズハートをどれだけ可愛らしく見せられるかチャレンジやってるので……"毎回楽しみにしている"とのコメントも、とっても嬉しかったです!書く気が起きました。よかったらまたコメントしてくださいね。 (2020年8月13日 2時) (レス) id: 0bc2fe8691 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Collet | 作成日時:2020年6月21日 10時