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「これは私の自業自得だから気にしないで」
自分はベッドで寝て、推しを地べたに寝かせるなんて罪深い行為のように思えてきたけれど、それでも知らない女の匂いが染み込んだベッドに寝かせるよりかはマシだろう。散乱していたものを戻しながら、ファスナーを開ける。
布団を両手で抱え、空き部屋に持って行こうとしたその瞬間。陶器のような手のひらに、強引に腕を掴まれた。
漏れ出たのは「ちょ」という、頼りない音だけで、振り払うことは出来ない。慌てて視線をやると、リドルくんは下唇を噛みしめていた。
プツリと血の浮かんだ唇が、ゆっくりと動き出す。
「…ボクは、もう帰れないと思うし」
飛び込んできた言葉は、重々しく。
「その場合、暫くキミの世話になってしまうとも思う」
それは、プロポーズかと思うくらいに真剣な表情であった。誰がこれほどまでに甘いシチュエーションを浴びせてくれると思うだろう。
呆然とした思考の中、全て私の思い違いであるが、困り果てたような眼差しに心臓が捻れてしまうほどに締めつけられる。そして、「はひ」と、自分でもビックリするくらい呆けた声が出る。
掴まれた箇所が、燃えるように熱かった。
「だから…キミと、せめて会話出来る程度に仲良く出来たら、今後上手くやっていけるのではないかと思って」
リドルくんがゆっくりと息継ぎをする。私もバクバクと鳴る心臓を落ち着かせるように息を吐いて、ゆっくりと吸い込んだ。ようやく視線がかち合う。
「…そのための最初の一歩として、ボクも手伝わせてほしい」
後頭部をガツン、と殴られたような気分であった。
彼はただの女王様なワケではなく、こちらとの関係が上手くいくように、不器用にも歩み寄ってくれているのだと理解する。
どうやら神様は、願ったもの以上に素晴らしいプレゼントをしてくれたようだ。
もちろん、リドルくんのファンとして、同居人として、答えは決まっている。
「は…、はい…」
私は震える指を抑えて、肯定の言葉と共にフカフカとは言えない布団を渡した。
それを見て、彼は満足気に笑う。極めつけに「ありがとう」なんて言われたら、こんなのリドルの女になるしかない。いや、既になっていた。
空き部屋へと案内しながら、小柄な彼のうしろをついて行く。綺麗に背筋の伸びた背中。じんわりと、歯の隙間から滲み出るような幸せを噛み締める。
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Collet(プロフ) - いろはさん» コメントありがとうございます!^^飯テロ小説初めてなので美味しいと思っていただけているのならとっても嬉しいです〜!わたしも国宝級イケメンと住みたいんですけどそんな世界線どこかにありませんかね…。 (2020年9月27日 17時) (レス) id: 0bc2fe8691 (このIDを非表示/違反報告)
いろは - もんのすごい食レポ上手いっすね...お腹すいてきました()リドルくんと住みたいぃぃぃい (2020年9月27日 16時) (レス) id: 783a9cd7e8 (このIDを非表示/違反報告)
Collet(プロフ) - まめさん» キレ気味笑いました!ありがとうございます!頭の中で喋っているリドルくんを書き起こしているだけの状態なので、私の解釈しかこもってないんですよ…。理想通りで嬉しいです!^^ 次回更新で続編に移るので、そちらもぜひ読んでください。 (2020年8月21日 0時) (レス) id: 0bc2fe8691 (このIDを非表示/違反報告)
まめ - 可愛いなぁもう!!!(キレ)めっちゃ理想どうりのリドルくんで感動してます!大好きです!更新がんばってください。応援してます! (2020年8月19日 19時) (レス) id: 9861be23cf (このIDを非表示/違反報告)
Collet(プロフ) - やなさん» ありがとうございます……ありがとうございます…リドル・ローズハートをどれだけ可愛らしく見せられるかチャレンジやってるので……"毎回楽しみにしている"とのコメントも、とっても嬉しかったです!書く気が起きました。よかったらまたコメントしてくださいね。 (2020年8月13日 2時) (レス) id: 0bc2fe8691 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Collet | 作成日時:2020年6月21日 10時