【d!】殺人鬼、脅威を拾う。 (ページ12)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:25,455 hit

10 ページ12

「…っはあ！？なんでや？」
「え、な、なんで」
「…そうやってお前も裏切るんやろ」
「えっとですね…この国の総統はご存知ですか？」

この国の総統閣下。
グルッペン・フューラー。
国民から圧倒的支持を得ている、歴史上最高の指導者。

「グルッペン・フューラー様ですよね？」
「はい。グルッペンさんが、Aさんの噂を耳にされまして。
『その才能をただの一般人として埋もれさせているには惜しい。是非ともその才能を、国を発展させ、国を守ることに生かして欲しい』と、おっしゃっていまして。
まあ要するに、戦士としてAさんを引き抜きたい。ということです」
「…才能」

私は今まで、人を殺して生きてきた。これが才能、とはどんな悲劇だろうか。
こんな私を見てくれるのか。

頭が追いつかない。
戦士として、生きていく。

「…それで、俺はなんなん」
「ゾムさんは、元々引き抜くことが決定していたのですよ」
「ゾムが…？」

そんな大層な人なら、今頃こんなところには居ないだろうに。
ゾムは驚いた後、また訝しい顔をした。

「はい。聞いたことが無いですか？ゾムさんの家名。ボンベ」
「ちょっ……」
「…え？」

ゾムの名字って、クロアップじゃ…
ゾム、嘘ついてたのか。

「ゾムさん今年で16ですし、軍に入るのは知っていたと思うのですが…」
「…16！？4！4！も違う！！」
「4…？」

エーミールさんは如何にも不思議そうな顔をする。

「ゾム……」
「い、いやちゃうんすよ。あんな擬態を晒した後だとどうにも16とは言い難くって…
丁度弟が12やしそれ使ったろって。クロアップは母さんの名字で…」
「……嘘ついてたのか」
「ほんま！ほんま許して！やって信用出来ひんかってんAのこと！」
「…はぁ」
「捨てんといて？な？」

子犬の耳と尻尾が見える気がする。
嘘つかれてて良い気になる人なんて居ないよなぁ。

「ま、まあ兎に角。
事情を聞くのは要塞でにしましょう」

エーミールさんはそう言うと、ドアを指差した。

「車を用意しているので、それに乗ってください」
「Aさん、大丈夫ですよ。君達はなんだかんだ、しぶとそうですし」

アベルさんは、ほっと安心した様に言った。
なんだかんだ、気にかけてくれてたのか。

「…分かりました。ゾム、行こうか」
「おん」

ゾムは微妙な顔をして頷いた。