漆 ページ14
「虎が現れても私たちの敵じゃないよ。こう見えても『武装探偵社』の社員だ」
Aはまだ敦を怒っているのか、そもそも会話に参加する気すら無いのか、ぼうっと月見に興じている。不思議な娘だな…敦は頭の隅でそう感じた。太宰が本の頁を捲る音がした。
「はは。凄いですね、自信のある人は…」
敦はすっかり諦め切ったような調子でそう云った。
「僕なんか、孤児院でもずっと『駄目な奴』って言われてて、そのうえ今日の寝床も明日の食い扶持も知れない身で」
「…」
Aは膝を抱えた敦を、哀れだとも思わなかった。只、その現身に�狠�か�瓩鮖廚そ个靴討い拭�
「こんな奴がどこで野垂れ死んだって。いや、いっそ喰われて死んだほうが＿＿」
きっとそれは同じく敦を黙って見つめる太宰も同じだったろう。その彼の外套の裾を、くいっくいっとAが引っ張った。太宰に、空からすっかり雲がいなくなった事を伝える為に。どうしてか。
「却説＿＿＿そろそろかな」
太宰とAの二人が見上げる月を、敦も見上げた。
その時、Aは初めて気が付いた。この敦という少年の瞳の色が、月と同じ色をしているという事に。優しい、淡い色だという事に。
ガタン。突然した物音に、敦は大きく身じろいだ。
「今…そこで物音が！」
「そうだね」
倉庫ではまだ太宰が本の頁を捲る音がした。Aは顔色一つ変えなかった。敦にとって、それは異常だった。どうしてそんな冷静でいられるんだ。
どうしてそんな落ち着いていられるんだ。こんな状況で＿！
「風で何か落ちたんだろう」
「ひ、人喰い虎だ。僕を喰いに来たんだ」
慌てふためく敦を、太宰が宥めようとする。「座りたまえよ敦君。虎はあんな処からは来ない」
「ど、どうして判るんです！」
「そもそも変なんだよ、敦」
ここで漸く太宰が手元の本を閉じた。
「経営が傾いたからって養護施設が児童を追放するかい？大昔の農村じゃないんだ。いや、そもそも経営が傾いたんなら一人二人追放したところでどうにもならない。半分くらい減らして他所の施設に移すのが筋だ」
「太宰さん、何を云って＿」
月明かりが、敦を包む。彼の眼光と、月光が交じり合った。
「君が街に来たのが２週間前。虎が街に現れたのも２週間前」
ドクン。敦の心臓が脈を打った。否、全身を流れる血そのものが、一変してしまったかのようだった。
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サラ(プロフ) - あいさん» ありがとうございます、張り切ります! (2018年11月12日 1時) (
レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - おお！更新ありがとうございます！これからもファイトです！ (2018年11月6日 8時) (レス) id: a2c75168cb (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - あいさん» いえいえ、待っていてくださってありがとうございます!何とか書き上げられるように頑張ります! (2018年10月22日 23時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - ストーリーが思いつかない感じなんでしょうか？全然待つので、最後までお話が読みたいです！よろしくです！！もし、しつこかったらすみません･･････更新頑張ってください！ファイトです！ (2018年10月22日 21時) (レス) id: a2c75168cb (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - あいさん» いえいえ、ご期待に添えるか判りませんが、頑張らせていただきます!これからもよろしくお願いします! (2018年8月21日 22時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラ | 作成日時：2018年8月21日 22時
