| 枕 ページ9
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「そう。…嗚呼、そうだ。虎の子は如何なったの?」
太宰くんの目を見ていられなくなり、顔を逸らして話題を変える。何故か汗も出てきた。
「社員にすることにしました。今日、入社試験をさせるつもりです」
「へぇ。名前は?」
「中島敦という少年です」
中島敦。何処かで聞いた覚えが…
そうだ、私のお財布を盗もうとした子だ。
「敦くんがか。そうだ、太宰くんのお財布を盗めって命令したしな。」
「ええ、そんな事言ったんですか?」
「だって川で流れていたから」
一切変わらない、仮面の様な笑顔で、酷いなあ、と言われ自然とため息が零れた。
之だから太宰くんは苦手なんだ。普通の表情は出来ないのか。
布団を剥がして、ベッドから降りる。
「あれ、未だ寝てても善いのに」
「今何時よ」
「朝の1時。」
「最悪、眠い、帰る。以上」
床に置かれた靴を履いて、さっさと医務室を出た。
後ろからは不満を云っている太宰くんが着いてくるが無視をして、階段を降りる。
「ねーAさん」
「何?」
「今日、私の家においでよ」
手を握られ振り払うが、何度振り払っても握ってくるので諦めて其の儘にした。
「否よ。太宰くんの家、包帯で散らかってるし」
「じゃあ、片付けたら来て呉れるのかい?」
「何でそんなに嬉しそうなの…
片付けられたとしても、同じ枕でしか私は眠れないの」
探偵社の外に出れば、外はもう真っ暗で月や星、街頭が辺りを照らしているだけだった。寒さも少しあり、目を瞑って息を吐いた。
太宰くんと私の家は真反対なので、此処で手を離して貰わなければいけない。然し、何度も握ってくる彼なので、如何しようかと立ち止まる。
「同じ枕って…さっき迄ぐっすり眠っていたじゃないか」
「あ、あれは…先に、寝ていた状態だったからよ!」
「…嗚呼、そうか、そうすれば」
1人でぶつぶつ何か云っているもんだから、何よ、と言った。
だが、言い終わる前に強い力で引き寄せられる。
「此処で寝てもらえば良いんだ」
刹那、腹部に激痛が走り、意識が途切れた。
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腹部を軽く殴れば、Aさんは前に倒れてくる。倒れてきたその体を受け止め、抱き上げた。
毎日食べているのか不安になる程、細く軽い体だ。
彼女の顔を見ていると、まだ"ポートマフィア"に居た頃を思い出す。
「Aさん。私と心中してください」
頭の中でAさんの怒る声が聞こえ、自然と口角が上がった。
*
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とんかつ(プロフ) - uevevshさん» ありがとうございます!頑張ります! (2023年3月24日 9時) (レス) @page10 id: 9a7e0ef9d9 (このIDを非表示/違反報告)
uevevsh(プロフ) - どうしよう可愛いッッッ!!!!!!面白い作品をありがとうございます!!所々、キュンキュンも入っていて素敵です…!更新待ってます!!! (2023年3月23日 13時) (レス) @page8 id: 7b11ace105 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とんかつ | 作成日時:2023年3月21日 13時