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| 駅 ページ11

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Aは家へ一度帰り、着替えてお風呂に入った。

お風呂に設置された姿見を見れば、彼女の骨が浮き上がった体が映される。白く、所々に痣や傷が有り、迚痛々しい。黒い髪の毛が水分を吸収し、濡れてゆく。

Aは自分の髪の毛を洗い乍、ふと、ある言葉が頭に浮かぶ。


「"お前は、ほんとに馬鹿な奴だ"…か。

…そうかもしれないわね」


ふ、とAは微笑む。

シャワーの音はまるで、彼女の寂しさを表すかのような、雨の音に酷く似ていた。



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「却説、何処の駅が良いかなあ」


此処ら一帯の地図と睨み合い、良さげの駅を探す。

矢張り、人の少ない処が善いだろうか。
誰かに看取られる気も一切無いし、寧ろ見られたく無い。
人が少なく、静かで、死に易い駅…。


「あ」


良さげの駅を見付け、私は自然と口角が上がる。




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「ほー、矢張り人少ないねぇ」


次、来る電車は此処に停らず次の駅に停る。好都合だ、死ぬ可能性が高くなる。

3分後。

後、もう少しで来る。

遺書とか、書いた方が善かっただろうか。
否、読む人間も居ないだろう。居るとしても…僕くん辺り?

僕くん怒りそうだな。
頭の中で羅生門を此方にぶつけてくる僕くんの姿が浮かび、苦笑いした。

後は、乱歩さんとか?太宰くんは無さそう。

なんて、自分が死んだ後の事を想像していれば、アナウンスが鳴る。


「…よし」


電車の音が大きくなり、後少しと云う処で私はホームから飛び出た。







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「_____てめっ、何してんだよ!!後少しで死ぬ処だったぞ!?」


飛び出た筈なのに、私はホームに座り込んでいる。目の前には背の小さい、帽子を被った男性。


「…久しぶりに会うね、"中也"くん」


あっという間に電車は通り過ぎて行った。




*

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とんかつ(プロフ) - uevevshさん» ありがとうございます!頑張ります! (2023年3月24日 9時) (レス) @page10 id: 9a7e0ef9d9 (このIDを非表示/違反報告)
uevevsh(プロフ) - どうしよう可愛いッッッ!!!!!!面白い作品をありがとうございます!!所々、キュンキュンも入っていて素敵です…!更新待ってます!!! (2023年3月23日 13時) (レス) @page8 id: 7b11ace105 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:とんかつ | 作成日時:2023年3月21日 13時

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